fan
June 09, 2012
The L Word Season7-11
毎度毎度、お待たせしてしまって、申し訳ないです(T∀T)
そういやさぁ、Season7って途中で終わっちゃったの
って思ってる方も、中にはおられるかも?
でも、終わってません。しっかり完結させるつもりでおりますので、
忘れた頃に読み直してくださると、嬉しいです(´_ _`)
前の内容で、記憶が薄れちゃった方は、コチラ
The L Word Season7 (10) をクリックして頂くと、過去のものも一気読み出来ますので、よかったらどーぞ(^▽^;)
・・・では、Season7-11を、お楽しみ下さい
☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜
〜Paris。
ホテルのラウンジに落ちる陽射し。
昼間のホテルは、ビジネスマンも出勤中とあってか、静かな空間と化している。
近くの広場では、外国人観光客が、しきりに写真撮影をしていた。
久しぶり、と手を振り腰を上げた彼女の笑顔は、あの日と変わらなかった。
立ち上がり、ハグをする二人。
懐かしい香り。…いいえ何も知らなかった。当時から彼女は謎めいてたから。
むしろ辛い思い出の方が多いというのに、彼女の付けるエキゾチックな香水の香りが
Jennyをあの日の自分へと誘う(イザナウ)。
『噂は、かねがね聞いてるわよ。』
Marinaが笑う。
その目に吸い込まれぬように、Jennyはテーブルへと目線を落とし、腰掛けた。
『そう?自分の映画を乗っ取られた、間抜けな監督って事で有名なの?笑っちゃうわ。』
俯くJennyの長い睫毛が、微かに風に揺れる。
続けてMarinaも腰を落としながら、崩れぬ笑顔のまま、真っ直ぐに彼女を見つめた。
『そんなこと、ないわよ。』
すらりと長い腕を伸ばし、Jennyの髪をさりげなくなぞろうとする。
しかしJennyは彼女の手を遮るかのように、テーブルに置かれた台本を手に取った。
『髪、伸ばさないのね?似合っていたのに。』
テーブルに肘を付いたまま、Marinaは再度Jennyを見つめた。
『コーヒーを。』
Jennyは黙ったまま、近くにいた店員を呼び止め、オーダーをする。
一瞬、冷たい空気が、二人の前を通り抜ける。
『仕事の話をしましょう。』
真っ直ぐMarinaを見つめ、Jennyは静かなトーンで語りかけた。
『そうね。』
Marinaは、笑顔を崩す事なく、台本に視線を落とした。
〜LA。
慌ただしい引っ越し作業も、仲間がいるだけで助かるもの。
例え業者に任せきりであっても、気分的に変わるものだ。
引っ越しも、滞りなく終わった。
また、アンジーは転校生として、新学校へ通い始めた。
Tinaは、相変わらずバタバタとしているが、新生活は、落ち着きを取り戻しつつあった。
『・・・折角、LAに戻ったのだから。』と、
Betteには、MOCA(美術館)の専属curatorや、UCLAへの返り咲きの話まで来ていた。
しかし、彼女は不思議とあまり未練がないようで、アッサリと断り続けていた。
Betteにはやりたいことがあった。
今を逃すと出来なくなること。
それをTinaに話したかった。
そして、あの事も・・・。
『今日も、帰って来られないのかしら。』
夕食の支度をしながら、Betteはため息をつく。
ふと、家を任せきりにしていた頃の自分と、Tinaの寂しそうな笑顔を思い出した。
一方Tinaは、Focus Futures 新支店の役員として、多忙を極めていた。
役員とは名ばかりの、設立したての会社。
それこそ、事務員に任せていたような庶務的な事まで、見なければならない状態。
家に帰れない日が、連日続いた。
デスクに軽く腰掛け、飲みかけの冷えた珈琲を、溜め息混じりに口にする。
積み上げられた書類。
疲れた肩をそっと、片手で揉み解す。
目線をふと斜めにやると、家族3人の写真が目に入った。
『・・・よし、やりますか。』
珈琲を一気に飲み干し、唇を結び直して、Tinaは部屋のドアを勢い良く開けた。
〜Paris。
打ち合わせも順調に進み、気が付くと、外はすっかり陽が落ちていた。
『今日は、この位にしない?』
Marinaが、彼女に笑顔を向ける。
その笑顔も心なしか、疲労が見えた。
『そうね。後はエージェント達も交えて、本格的にやりましょう。』
伏し目がちのまま、Jennyは台本を閉じる。
『食事でもとらない?』
そう話しかけたのは、意外にもJennyの方からだった。
『そうね。じゃぁ・・・最近見つけたお勧めのレストランがあるから、そこに行かない?』
『あなたに任せるわ。ただ・・・』
『何?』
立ち上がりながら、Marinaが尋ねる。
『今の私、レストランには相応しくない姿だから、着替えたいのだけど。』
『構わないわ。じゃ私はここで待っていればいい?』
一瞬、小さな沈黙がJennyを包む。
きっとその一瞬を、彼女は気付いていないだろう。
『ええ、そうね。悪いけど。』
そう、か細い声で告げ、Jennyは立ち上がった。
そういやさぁ、Season7って途中で終わっちゃったの
って思ってる方も、中にはおられるかも?
でも、終わってません。しっかり完結させるつもりでおりますので、
忘れた頃に読み直してくださると、嬉しいです(´_ _`)
前の内容で、記憶が薄れちゃった方は、コチラ
The L Word Season7 (10) をクリックして頂くと、過去のものも一気読み出来ますので、よかったらどーぞ(^▽^;)
・・・では、Season7-11を、お楽しみ下さい
☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜
〜Paris。
ホテルのラウンジに落ちる陽射し。
昼間のホテルは、ビジネスマンも出勤中とあってか、静かな空間と化している。
近くの広場では、外国人観光客が、しきりに写真撮影をしていた。
久しぶり、と手を振り腰を上げた彼女の笑顔は、あの日と変わらなかった。
立ち上がり、ハグをする二人。
懐かしい香り。…いいえ何も知らなかった。当時から彼女は謎めいてたから。
むしろ辛い思い出の方が多いというのに、彼女の付けるエキゾチックな香水の香りが
Jennyをあの日の自分へと誘う(イザナウ)。
『噂は、かねがね聞いてるわよ。』
Marinaが笑う。
その目に吸い込まれぬように、Jennyはテーブルへと目線を落とし、腰掛けた。
『そう?自分の映画を乗っ取られた、間抜けな監督って事で有名なの?笑っちゃうわ。』
俯くJennyの長い睫毛が、微かに風に揺れる。
続けてMarinaも腰を落としながら、崩れぬ笑顔のまま、真っ直ぐに彼女を見つめた。
『そんなこと、ないわよ。』
すらりと長い腕を伸ばし、Jennyの髪をさりげなくなぞろうとする。
しかしJennyは彼女の手を遮るかのように、テーブルに置かれた台本を手に取った。
『髪、伸ばさないのね?似合っていたのに。』
テーブルに肘を付いたまま、Marinaは再度Jennyを見つめた。
『コーヒーを。』
Jennyは黙ったまま、近くにいた店員を呼び止め、オーダーをする。
一瞬、冷たい空気が、二人の前を通り抜ける。
『仕事の話をしましょう。』
真っ直ぐMarinaを見つめ、Jennyは静かなトーンで語りかけた。
『そうね。』
Marinaは、笑顔を崩す事なく、台本に視線を落とした。
〜LA。
慌ただしい引っ越し作業も、仲間がいるだけで助かるもの。
例え業者に任せきりであっても、気分的に変わるものだ。
引っ越しも、滞りなく終わった。
また、アンジーは転校生として、新学校へ通い始めた。
Tinaは、相変わらずバタバタとしているが、新生活は、落ち着きを取り戻しつつあった。
『・・・折角、LAに戻ったのだから。』と、
Betteには、MOCA(美術館)の専属curatorや、UCLAへの返り咲きの話まで来ていた。
しかし、彼女は不思議とあまり未練がないようで、アッサリと断り続けていた。
Betteにはやりたいことがあった。
今を逃すと出来なくなること。
それをTinaに話したかった。
そして、あの事も・・・。
『今日も、帰って来られないのかしら。』
夕食の支度をしながら、Betteはため息をつく。
ふと、家を任せきりにしていた頃の自分と、Tinaの寂しそうな笑顔を思い出した。
一方Tinaは、Focus Futures 新支店の役員として、多忙を極めていた。
役員とは名ばかりの、設立したての会社。
それこそ、事務員に任せていたような庶務的な事まで、見なければならない状態。
家に帰れない日が、連日続いた。
デスクに軽く腰掛け、飲みかけの冷えた珈琲を、溜め息混じりに口にする。
積み上げられた書類。
疲れた肩をそっと、片手で揉み解す。
目線をふと斜めにやると、家族3人の写真が目に入った。
『・・・よし、やりますか。』
珈琲を一気に飲み干し、唇を結び直して、Tinaは部屋のドアを勢い良く開けた。
〜Paris。
打ち合わせも順調に進み、気が付くと、外はすっかり陽が落ちていた。
『今日は、この位にしない?』
Marinaが、彼女に笑顔を向ける。
その笑顔も心なしか、疲労が見えた。
『そうね。後はエージェント達も交えて、本格的にやりましょう。』
伏し目がちのまま、Jennyは台本を閉じる。
『食事でもとらない?』
そう話しかけたのは、意外にもJennyの方からだった。
『そうね。じゃぁ・・・最近見つけたお勧めのレストランがあるから、そこに行かない?』
『あなたに任せるわ。ただ・・・』
『何?』
立ち上がりながら、Marinaが尋ねる。
『今の私、レストランには相応しくない姿だから、着替えたいのだけど。』
『構わないわ。じゃ私はここで待っていればいい?』
一瞬、小さな沈黙がJennyを包む。
きっとその一瞬を、彼女は気付いていないだろう。
『ええ、そうね。悪いけど。』
そう、か細い声で告げ、Jennyは立ち上がった。
pikasama69 at 07:00|Permalink│Comments(12)│
February 15, 2012
The L Word Season7-10
前の内容で、記憶が薄れちゃった方は、コチラ
The L Word Season7 (9) をクリックして頂くと、過去のものも一気読み出来ますので、よかったらどーぞ(^▽^;)
・・・では、Season7-10を、お楽しみ下さい
翌日。快晴。日差しが眩しい。窓から見える雪の名残が輝く。
絶好の引越日和だ。
引越は、Betteが全て業者に頼み、滞りなく進んだ。
自分達の少しの荷物をスーツケースに詰め、空港へと向かう。
アンジーは友達との別れに少し泣いていた。
最初、一足先にBetteとアンジーだけが向かう予定だったが、
仕事が早めに片付いた事で3人揃って、LAに帰れるようになった。
久しぶりに乗る飛行機。
たった数時間のフライトだが、何となく気持ちが弾んでいた。
〜LA。
Planetのドアが勢いよく開く、とShaneが明るい表情で入ってきた。
周りをキョロキョロと見渡す。
そこに笑顔を振り撒きながら、Helenaが近づく。
『いよいよね!』
鼻先をいじりながら少し照れ笑いをするShane。
『Kitは?』
『今奥にいるわ。』
『そっか、ちょっと行ってくるね!』
Shaneは足早にKitのスタッフルームへ向かう。
その姿がいつもより凛々しく、逞しい。
・・・?
Helenaは一瞬不思議に思ったが、きっと彼女達が帰ってくるからそう見えたのね、
と踵を返し、キッチンへと消えた。
ドアをノックすると、『どうぞ』と明るい声が聞こえた。
部屋には、SONYと娘のマリア、そしてKit。既にAliceの姿もあった。
『なんだ、みんな早いじゃん』
笑顔で部屋に入る。
『ちょっとShane、いつもよりおめかししてない?今度は空港のお姉さんでも落とすつもり?』
Aliceが、笑いながらShaneを小突く。
Shaneは、シャツの襟を立てながら真顔で
『そういうのは、もう、卒業したんだ。』と答えた。
その台詞にみんなが笑う。
『またまたー。今度はいつまで続くやら。』
『ね、ね。そんな事より、もう行かないと。空港に着いちゃうわ。』
バタバタとネックレスを首にかけ、Kitが車のキーをSONYに渡した。
手荷物を無事受け取り、Bette達が出口へと歩く。
アンジーは涙も乾き、笑顔で自分用のカートを押している。
と、出口にKit達の姿が見えた。
自然と皆に笑顔が浮かぶ。
『お帰り!』
Shaneが叫ぶ。
『ハーイ!アンジー、元気だった?』
Kitがアンジーを抱きしめる。
そこに、BetteとTinaが笑顔で近づいてきた。
『ハーイ久しぶり。みんな元気だった?』
TinaがAliceとふざけてハグをする。
BetteはShaneとハグをし、続けてKit、SONYとハグをしてゆく。
『なんだか、不思議ね。』
照れたようにBetteが笑う。
『何が?』
『だって、昨日NYに行って、今日帰ってきた気分なんだもの。』
『そう?私は随分待たされたって思うよ?』
笑いながら、ShaneがAliceの肩に首を擡げる。
『あんたが一番淋しがってたもんね。』
笑顔でShaneの肩に手を回す。
『ところで、Helenaは?』
『今お店を見てくれてるわ。その話は後でじっくりね。時間はたっぷりあるんだから。』
とびきりの笑顔でKitが言い、アンジーのカートに手をかけた。
空港の外には雲ひとつない、抜けるような青空。
眩しい光がBetteの視界を遮る。
振り向くと、笑顔のTinaと目が合い、目配せをした。
前を向いたBetteは大きく息を吸い込み、新たな場所へと歩きだした。
〜フランス、パリ
曇り空が、より人をアンニュイな気分にさせるわ・・・。
久しぶりにタバコをふかしながら、Jennyは街の喧騒を窓から眺めている。
今日は、いよいよ久しぶりにあの人に会うのね。
この世界に身を置いてから、いろんなことがあった。
裏切りと陰謀、嫉妬そして失望。良い事の方が少なかったと思う。
それでも私が続けてこられたのは、やっぱり人生の岐路に立つと
必ずあの人が私の前にいたから・・・。
ゆらめく煙を眺めながら、ふと小さく笑う。
・・・バカね。今更なにを言うつもり?
と、Jennyの携帯が鳴る。
相手は、取引先のエージェントからだった。
『解ったわ。今晩19時。RITZホテルね。ええ、ヴァンドーム広場なら迷わずに行けるわ。』
灰皿に置いたタバコの煙が、天井へと緩やかに伸びてゆくのをJennyは見つめ、
そしてあの日の出来事をぼんやりと回想していた。
The L Word Season7 (9) をクリックして頂くと、過去のものも一気読み出来ますので、よかったらどーぞ(^▽^;)
・・・では、Season7-10を、お楽しみ下さい
翌日。快晴。日差しが眩しい。窓から見える雪の名残が輝く。
絶好の引越日和だ。
引越は、Betteが全て業者に頼み、滞りなく進んだ。
自分達の少しの荷物をスーツケースに詰め、空港へと向かう。
アンジーは友達との別れに少し泣いていた。
最初、一足先にBetteとアンジーだけが向かう予定だったが、
仕事が早めに片付いた事で3人揃って、LAに帰れるようになった。
久しぶりに乗る飛行機。
たった数時間のフライトだが、何となく気持ちが弾んでいた。
〜LA。
Planetのドアが勢いよく開く、とShaneが明るい表情で入ってきた。
周りをキョロキョロと見渡す。
そこに笑顔を振り撒きながら、Helenaが近づく。
『いよいよね!』
鼻先をいじりながら少し照れ笑いをするShane。
『Kitは?』
『今奥にいるわ。』
『そっか、ちょっと行ってくるね!』
Shaneは足早にKitのスタッフルームへ向かう。
その姿がいつもより凛々しく、逞しい。
・・・?
Helenaは一瞬不思議に思ったが、きっと彼女達が帰ってくるからそう見えたのね、
と踵を返し、キッチンへと消えた。
ドアをノックすると、『どうぞ』と明るい声が聞こえた。
部屋には、SONYと娘のマリア、そしてKit。既にAliceの姿もあった。
『なんだ、みんな早いじゃん』
笑顔で部屋に入る。
『ちょっとShane、いつもよりおめかししてない?今度は空港のお姉さんでも落とすつもり?』
Aliceが、笑いながらShaneを小突く。
Shaneは、シャツの襟を立てながら真顔で
『そういうのは、もう、卒業したんだ。』と答えた。
その台詞にみんなが笑う。
『またまたー。今度はいつまで続くやら。』
『ね、ね。そんな事より、もう行かないと。空港に着いちゃうわ。』
バタバタとネックレスを首にかけ、Kitが車のキーをSONYに渡した。
手荷物を無事受け取り、Bette達が出口へと歩く。
アンジーは涙も乾き、笑顔で自分用のカートを押している。
と、出口にKit達の姿が見えた。
自然と皆に笑顔が浮かぶ。
『お帰り!』
Shaneが叫ぶ。
『ハーイ!アンジー、元気だった?』
Kitがアンジーを抱きしめる。
そこに、BetteとTinaが笑顔で近づいてきた。
『ハーイ久しぶり。みんな元気だった?』
TinaがAliceとふざけてハグをする。
BetteはShaneとハグをし、続けてKit、SONYとハグをしてゆく。
『なんだか、不思議ね。』
照れたようにBetteが笑う。
『何が?』
『だって、昨日NYに行って、今日帰ってきた気分なんだもの。』
『そう?私は随分待たされたって思うよ?』
笑いながら、ShaneがAliceの肩に首を擡げる。
『あんたが一番淋しがってたもんね。』
笑顔でShaneの肩に手を回す。
『ところで、Helenaは?』
『今お店を見てくれてるわ。その話は後でじっくりね。時間はたっぷりあるんだから。』
とびきりの笑顔でKitが言い、アンジーのカートに手をかけた。
空港の外には雲ひとつない、抜けるような青空。
眩しい光がBetteの視界を遮る。
振り向くと、笑顔のTinaと目が合い、目配せをした。
前を向いたBetteは大きく息を吸い込み、新たな場所へと歩きだした。
〜フランス、パリ
曇り空が、より人をアンニュイな気分にさせるわ・・・。
久しぶりにタバコをふかしながら、Jennyは街の喧騒を窓から眺めている。
今日は、いよいよ久しぶりにあの人に会うのね。
この世界に身を置いてから、いろんなことがあった。
裏切りと陰謀、嫉妬そして失望。良い事の方が少なかったと思う。
それでも私が続けてこられたのは、やっぱり人生の岐路に立つと
必ずあの人が私の前にいたから・・・。
ゆらめく煙を眺めながら、ふと小さく笑う。
・・・バカね。今更なにを言うつもり?
と、Jennyの携帯が鳴る。
相手は、取引先のエージェントからだった。
『解ったわ。今晩19時。RITZホテルね。ええ、ヴァンドーム広場なら迷わずに行けるわ。』
灰皿に置いたタバコの煙が、天井へと緩やかに伸びてゆくのをJennyは見つめ、
そしてあの日の出来事をぼんやりと回想していた。
pikasama69 at 14:50|Permalink│Comments(12)│
January 20, 2012
Season7-9
誰もいない朝。
木漏れ日の落ちるキッチン。冷たいフローリング。
ここ最近ShaneとJennyの家の中は、静まり返っている。
Jennyはここのところ外出中が続いている。
聞くところによると、新たな新作映画が大手配給会社で決まったらしい。
詳しくはまたね、と言っただけで、Jennyはパリへ向けて出発した。
Shaneは・・・と言えば、暇さえあればジムに通う日々。
トレーニング後には、爽やかな笑顔でplanetにやってくる。
Jennyのいない静かな家に一人だというのに、何かつかえが落ちたような、
そんな表情を見せている。
コーヒーの香りが 心地良く充満したPlanet。
いつもの活気のある店内。
Sonyに娘のマリアを預け、Kitは今日も元気よく 新作のチーズmuffinを作る。
カウンターには、彩り鮮やかな赤ピーマンやオレンジ達が、艶やかに光っている。
カウンター越しに店内を見ると、そこには笑顔の戻ったHelenaが、颯爽とコーヒーを運んでいた。
Dylanとはまだ一緒には住んでいないようだが、こちらも憑き物が落ちたような、
澄んだ笑顔で 生き生きと働いている。
Planetの店内にも、明るい陽の光が差し込んでいた。
〜NY。
Tibetteが引越しに向け、動き出した。
NY生活(?)においての休息と、仕事を終えたAliceは、一足先にLAへと帰っていった。
亜美への想いを何も告げぬまま、彼女は日本へ送り出した。
・・・あの日、別れのあの日。
いつもなら、形振り構わず相手に縋り付くAliceが、彼女にはそうしなかった。
笑顔で見送ったよ、そう話していた。
その横顔がいつも以上に切なく、弱々しくすら見え、Aliceの本意がなんだったのか、
Bette達は触れられずにいた。
Aliceが帰ったNYは、静かなものだ。
吹雪も一緒にどこかへ飛んで行ってしまったような、穏やかな冬空。
でも、どこか淋しく感じる。
道路脇に出来た薄い氷の膜を、アンジーとその友達が大切そうに運んでいる。
真っ青な空に浮かぶ楕円型の雲が、緩やかに形を変え、伸びてゆく。
冷たくも優しい風が、街を包む。
会社から正式な辞令が下り、Tinaは取締役となった。
Betteは、娘の転校手続きと転居先の物件選びに、ばたついている。
元々住んでいた彼女達の家には、現在Kit夫婦が住んでいる。
出て行こうか?と、気を揉んでくれたKitだったが、さすがにそれには気が引け
新たな家を探した。
目まぐるしい毎日が過ぎ去り、いよいよ明日が引越当日という日を迎えた。
たった数年のNY生活。それでも、淋しさが影を落とす。
クラスメイトに貰った餞のカードが、Tibette家族の足跡を確かに物語っていた。
初めて経験させてしまう、アンジーの転校。
クラスメイトとの別れを淋しがるアンジーは可哀相だったが、逆に悲しい別れとなってくれた事が
二人の母にとって、今は嬉しく思っていた。
pikasama69 at 00:00|Permalink│Comments(6)│
December 07, 2011
Season7-8
休校で近所の友達の家に出掛けたアンジー。
Tinaは、昨日の大雪の影響で内勤となっていた。
『・・・でね、あの子、クラスのイジメっ子にこう言ってやったらしいわ。』
コーヒーをテーブルに置き、Betteが仁王立ちになる。
『あなた、知らないの?NY州での同性婚は合法なのよ。』
Aliceが手を叩いて爆笑した。
『まるでアンタそっくりじゃん!』
その様子をTinaが楽しそうにキッチンから眺める。
『しっかしさぁ、いまどきの子供は一端の言葉を知ってるよね。』
けしかけるようにAliceが笑う。
『それで?相手はなんて?』
『じゃぁ、お前んちの親はちゃんと結婚してんのかよって。』
『あら、言うね〜。』
零れそうになったコーヒーを拭いながらAliceは続ける。
『それじゃ、早いとこ結婚式を挙げないと。』
・・・なるほど。昨夜の事をTinaは思い出していた。
それでBetteは急に結婚式の話をし出したのね・・・。
苦笑いをしながら、冷蔵庫のドアを開ける。
冷たく冷えたミルクを取り出し、ほんの少し、コーヒーに入れる。
『で?貴女は?例の彼女とどうするの?』
座り直したBetteは、Aliceをじっと見つめる。
『さぁ。』
口元にカップを当てたまま、Aliceは答える。
『さぁって・・・あなたそれでいいの?』
『でもさ、もうじき日本に帰るんだってさ。』
『えっ?帰国しちゃうの?それでいいの?』
追い撃ちをかけるように台所越しからTinaが尋ねる。
『いいもなにも。私にゃ決められないじゃん。』
むっとした声で、Aliceが答える。
『違うのよ。私たちはあなたの気持ちを聞いているだけで・・・。』
黙ったまま、立ち上がるAlice。その目は二人を見ようとしない。
『ご馳走様。さてと、今日のあたしは忙しいのよ。またね。』
逃げるように玄関へ そそくさと向かう。
その後姿を、二人は心配そうに見つめ、そして何も言わないまま互いを見つめ合った。
〜LA。
ShaneはBedに一人寝転び、何かを読んでいる。
開け放した机の引き出し。
少し散らかった引き出しの中身が、はみ出しているのが見える。
Shaneが手にしているものは、以前Jennyから受け取ったMollyの手紙だった。
幾度となく読み返しただろう、細かなシワが手紙を泳いでいる。
彼女の書いている、この有効期限はいつまでだろうか。
横たわったまま寝返りを打ち、Shaneは天井を見上げた。
『そろそろ私達も 成長する頃なのかもよ。』
あの日のKitの声が優しく響く。
そうだ、自分から変わらないと。でも・・・今の自分に何が出来るのだろう。
Bedの脇に無造作に置かれた新聞。それにふと目をやる。
何気にそれを手に取り、パラリとめくる。
と、Shaneは一点を凝視していた。
それは、とある大会の出場者募集の文字。
Shaneは深呼吸をすると、唇を噛み締めたまま、携帯の番号を押しはじめた。
〜病院。
Dylanの献身的な看病もあって、Helenaは無事退院する運びとなった。
しかし、互いに多くを語らぬ日が続いていた。
二人の間で、何も進展する事もなかった。
『本当にもう、大丈夫だから。』
荷物を片付けながら、Helenaは重い口を開いた。
『うん、、解ってる。』
顔を上げることなく、DylanはBedのシーツを片付けている。
『・・・・・・ありがとう。』
少し、驚いたようにDylanが顔を上げた。
窓から柔らかい風が入り、カーテンをそっと揺らす。
木漏れ日が真っ白なシーツを照らしている。
『・・・・・ううん。 よかった。』
そこには、久しぶりに見る彼女の小さな笑顔があった。
その顔をじっと見ていると、Helenaは突然涙が零れてしまった。
見る間に、景色がかすんでゆく。
『なんで?・・・・え?なんで泣くの?』
シーツを持ったまま、Dylanが彼女の元へ歩み寄った。
背中に優しい光と影が揺れている。
『わかんない。ただ、、、、』
『・・・ただ?』
零れ落ちる涙を拭いながら、Helenaは絞り出すように声を出した。
『ただ、、、、ずっと貴女に逢いたかったの。』
すると、真白いシーツにフワリとHelenaが包み込まれた。
抱きしめた彼女の肩が震えている。
『ゴメン・・・。』
彼女を握りしめたDylanの指もまた 震えていた。
『信じて欲しいって、もう言わない。でもこれだけは言い続けるわ。』
真っ直ぐな目をDylanはHelenaに向けた。
『あなたを愛してる。』
パタパタと、廊下を急ぎ足で歩く看護婦の足音が、小さく消えていった。
Tinaは、昨日の大雪の影響で内勤となっていた。
『・・・でね、あの子、クラスのイジメっ子にこう言ってやったらしいわ。』
コーヒーをテーブルに置き、Betteが仁王立ちになる。
『あなた、知らないの?NY州での同性婚は合法なのよ。』
Aliceが手を叩いて爆笑した。
『まるでアンタそっくりじゃん!』
その様子をTinaが楽しそうにキッチンから眺める。
『しっかしさぁ、いまどきの子供は一端の言葉を知ってるよね。』
けしかけるようにAliceが笑う。
『それで?相手はなんて?』
『じゃぁ、お前んちの親はちゃんと結婚してんのかよって。』
『あら、言うね〜。』
零れそうになったコーヒーを拭いながらAliceは続ける。
『それじゃ、早いとこ結婚式を挙げないと。』
・・・なるほど。昨夜の事をTinaは思い出していた。
それでBetteは急に結婚式の話をし出したのね・・・。
苦笑いをしながら、冷蔵庫のドアを開ける。
冷たく冷えたミルクを取り出し、ほんの少し、コーヒーに入れる。
『で?貴女は?例の彼女とどうするの?』
座り直したBetteは、Aliceをじっと見つめる。
『さぁ。』
口元にカップを当てたまま、Aliceは答える。
『さぁって・・・あなたそれでいいの?』
『でもさ、もうじき日本に帰るんだってさ。』
『えっ?帰国しちゃうの?それでいいの?』
追い撃ちをかけるように台所越しからTinaが尋ねる。
『いいもなにも。私にゃ決められないじゃん。』
むっとした声で、Aliceが答える。
『違うのよ。私たちはあなたの気持ちを聞いているだけで・・・。』
黙ったまま、立ち上がるAlice。その目は二人を見ようとしない。
『ご馳走様。さてと、今日のあたしは忙しいのよ。またね。』
逃げるように玄関へ そそくさと向かう。
その後姿を、二人は心配そうに見つめ、そして何も言わないまま互いを見つめ合った。
〜LA。
ShaneはBedに一人寝転び、何かを読んでいる。
開け放した机の引き出し。
少し散らかった引き出しの中身が、はみ出しているのが見える。
Shaneが手にしているものは、以前Jennyから受け取ったMollyの手紙だった。
幾度となく読み返しただろう、細かなシワが手紙を泳いでいる。
彼女の書いている、この有効期限はいつまでだろうか。
横たわったまま寝返りを打ち、Shaneは天井を見上げた。
『そろそろ私達も 成長する頃なのかもよ。』
あの日のKitの声が優しく響く。
そうだ、自分から変わらないと。でも・・・今の自分に何が出来るのだろう。
Bedの脇に無造作に置かれた新聞。それにふと目をやる。
何気にそれを手に取り、パラリとめくる。
と、Shaneは一点を凝視していた。
それは、とある大会の出場者募集の文字。
Shaneは深呼吸をすると、唇を噛み締めたまま、携帯の番号を押しはじめた。
〜病院。
Dylanの献身的な看病もあって、Helenaは無事退院する運びとなった。
しかし、互いに多くを語らぬ日が続いていた。
二人の間で、何も進展する事もなかった。
『本当にもう、大丈夫だから。』
荷物を片付けながら、Helenaは重い口を開いた。
『うん、、解ってる。』
顔を上げることなく、DylanはBedのシーツを片付けている。
『・・・・・・ありがとう。』
少し、驚いたようにDylanが顔を上げた。
窓から柔らかい風が入り、カーテンをそっと揺らす。
木漏れ日が真っ白なシーツを照らしている。
『・・・・・ううん。 よかった。』
そこには、久しぶりに見る彼女の小さな笑顔があった。
その顔をじっと見ていると、Helenaは突然涙が零れてしまった。
見る間に、景色がかすんでゆく。
『なんで?・・・・え?なんで泣くの?』
シーツを持ったまま、Dylanが彼女の元へ歩み寄った。
背中に優しい光と影が揺れている。
『わかんない。ただ、、、、』
『・・・ただ?』
零れ落ちる涙を拭いながら、Helenaは絞り出すように声を出した。
『ただ、、、、ずっと貴女に逢いたかったの。』
すると、真白いシーツにフワリとHelenaが包み込まれた。
抱きしめた彼女の肩が震えている。
『ゴメン・・・。』
彼女を握りしめたDylanの指もまた 震えていた。
『信じて欲しいって、もう言わない。でもこれだけは言い続けるわ。』
真っ直ぐな目をDylanはHelenaに向けた。
『あなたを愛してる。』
パタパタと、廊下を急ぎ足で歩く看護婦の足音が、小さく消えていった。
pikasama69 at 00:13|Permalink│Comments(8)│
November 01, 2011
Season7-7
LAとは違い、NYの冬はとても厳しい。
週末の予報よりも早く、今年は雪が降った。
引っ越した当初は、アンジーも物珍しさに目を丸め、はしゃいでいたが、
今年の雪は違った。
例年を遥かに超える積雪量で、学校は休校。
都市部にも、大規模な交通マヒが起きた。
撮影で連日泊まり込みだった、Tinaの機嫌は最悪だ。
予定を大幅に変更させる為、朝から缶詰で打ち合わせに入った。
〜夜。
NYの街は大渋滞に見舞われ、やっとの思いで自宅に到着する。
車を止め、足元に纏わり付く憎らしい雪を払いながら、玄関のドアを開けた。
『お帰りなさい。』
暖かい食事と、大切な家族が目に飛び込む。
愛する二人の笑顔を見ると、自然と疲労も緩んだ。
『ママの手、すっごく冷たいよ。』
アンジーに手を引かれ、笑顔で暖炉の前に座る。
小さな温もりのある両手は、冷え切ったTinaの心をも温めてくれた。
『さ、ご飯にしましょう。』
明るい声でBetteが声をかける。
『今日は、アンジーとママTの大好きな コラードグリーンのグラタンと、マスのグリルよ。』
『良いこと、あったからね。』
ウインクを交わす二人。
『何?ママTにも教えて。』
アンジーが、ちょこんと椅子に座る。
続けてTinaも座った。
アンジーは嬉しそうに、学校の話を始めた。
『今日、先生からも連絡があったのよ。』
そっくりな笑顔で二人はTinaを見つめる。
『・・・でね、そばかすLindaも、乱暴なJohn達も、もうしないって。』
『そう、よかったじゃない。みんなにちゃんと言えた?』
『うん、また意地悪言われるかもしれないけど、そしたらJohnがお前の事、守ってやるって。』
『そうなの、だからご褒美なのね。』
娘の向こう側で、潤んだ瞳をそっと拭うBetteが見える。
Tinaは、とびきりの笑顔を二人に向け、こう言った。
『じゃぁ、今夜はパーティーね!』
静かな夜。
いつもより、少し長めのバスタイムだ。
Tinaは、パジャマ姿でダイニングへと歩きながら、濡れた髪をタオルで乾かしている。
『・・・そういやさぁ、あんた達って結婚式、まだしてないよね。』
Aliceに言われた台詞を、Tinaはふと思いだした。
暖炉の前のソファーに、腰掛ける。
『・・・眠ったわ。』
娘の寝室から、Betteがやってきた。
『何か飲む?』
キッチンに立つ彼女の姿にも、もう見慣れた。思わず笑みが零れる。
『なに?』
Betteが笑顔で尋ねる。
『ううん、別に。』
笑いながら、Tinaが席を立つ。
『何よ?気になるじゃない。』
笑顔のまま、尋ねるBette。
チン、と タイミング良くグラスの弾く音が響く。
『前にね、ほら、ここに越して来る時、Jamesも来ない?て誘ったら・・・。』
『あー、あったわね。私がしばらくはTinaに養って貰うからって言った。』
『そしたら皆が笑って。・・・なんで皆、笑ったのかしら?』
ワインを注ぎながら、Betteが尋ねた。
グラスのなかで、淡く黄色い泡が楽しげに弾けている。
『貴女が仕事人間だからよ。』
Tinaは歩み寄り、Betteに優しく抱きつく。
『今の私を見たら、やっぱり笑うかしら?』
少し拗ねた声で、Betteは尋ねる。
Tinaの少し裾長の袖を、指先でそっとなぞる。
『そんなことないわ。貴女はなんでも極める人だから。』
そう言うと、Tinaは少し背伸びをして、彼女の首筋に優しくキスをした。
Betteは嬉しそうに振り返り、そして二人は抱き合った。
『ねぇ・・・結婚式、いつにしようか。』
唐突な話に驚き、Tinaは思わずBetteの顔を見上げ、目を丸くした。
さっきの心を 読まれたかのような気分だ。
Betteはそっと彼女にグラスを渡し、自らも少しだけワインを口にする。
『どうせなら、ここでしたいわ。皆も呼んで。』
LAの夜、Betteが言った言葉は、本物だったとTinaは改めて悟った。
『・・・忘れられたかと思ってた。』
満面の笑みで、Tinaが答える。
『忘れるわけないでしょう?愛する人が忙しそうだから、奥様は気を利かせて待ってたのよ。』
Betteが笑う。
グラスを置き、甘えるように、Tinaが彼女にキスをした。
二人は腕を絡ませ、歩きながら何度もキスをした。
Tinaが寝室のドアにもたれかかり、Betteを受け入れる。
Betteは、右手をそっとTinaの膨らみの元へと滑らせる。
彼女の甘い吐息が、耳元で聞こえた。
もう一方の手で、柔らかな頬を優しくなぞる。
雪が深々とカーテンの隙間から降り積もっているのが見える。
二人は、更に奥へと唇を押し当てた。
飲んだばかりの甘いワインの香りが、鼻腔をくすぐる。
背中で感じる寝室のドアが、冷たく心地好い。
二人はドアに身体を押し当て、そして身を委ねた。
Betteは一瞬膨らみから悪戯に手を緩め、そのままドアノブへと手を伸ばす。
小さくカチリと音を立て、寝室が開いた。
窓の向こうに、白銀の世界がチラチラと見える。
深夜にも関わらず、一際白がぼんやりと明かりを照らしていた。
『今日は寒いから、温まりましょ・・・』
暗闇でBetteの囁く声が小さく聞こえ、そして静かにドアが閉まった。
週末の予報よりも早く、今年は雪が降った。
引っ越した当初は、アンジーも物珍しさに目を丸め、はしゃいでいたが、
今年の雪は違った。
例年を遥かに超える積雪量で、学校は休校。
都市部にも、大規模な交通マヒが起きた。
撮影で連日泊まり込みだった、Tinaの機嫌は最悪だ。
予定を大幅に変更させる為、朝から缶詰で打ち合わせに入った。
〜夜。
NYの街は大渋滞に見舞われ、やっとの思いで自宅に到着する。
車を止め、足元に纏わり付く憎らしい雪を払いながら、玄関のドアを開けた。
『お帰りなさい。』
暖かい食事と、大切な家族が目に飛び込む。
愛する二人の笑顔を見ると、自然と疲労も緩んだ。
『ママの手、すっごく冷たいよ。』
アンジーに手を引かれ、笑顔で暖炉の前に座る。
小さな温もりのある両手は、冷え切ったTinaの心をも温めてくれた。
『さ、ご飯にしましょう。』
明るい声でBetteが声をかける。
『今日は、アンジーとママTの大好きな コラードグリーンのグラタンと、マスのグリルよ。』
『良いこと、あったからね。』
ウインクを交わす二人。
『何?ママTにも教えて。』
アンジーが、ちょこんと椅子に座る。
続けてTinaも座った。
アンジーは嬉しそうに、学校の話を始めた。
『今日、先生からも連絡があったのよ。』
そっくりな笑顔で二人はTinaを見つめる。
『・・・でね、そばかすLindaも、乱暴なJohn達も、もうしないって。』
『そう、よかったじゃない。みんなにちゃんと言えた?』
『うん、また意地悪言われるかもしれないけど、そしたらJohnがお前の事、守ってやるって。』
『そうなの、だからご褒美なのね。』
娘の向こう側で、潤んだ瞳をそっと拭うBetteが見える。
Tinaは、とびきりの笑顔を二人に向け、こう言った。
『じゃぁ、今夜はパーティーね!』
静かな夜。
いつもより、少し長めのバスタイムだ。
Tinaは、パジャマ姿でダイニングへと歩きながら、濡れた髪をタオルで乾かしている。
『・・・そういやさぁ、あんた達って結婚式、まだしてないよね。』
Aliceに言われた台詞を、Tinaはふと思いだした。
暖炉の前のソファーに、腰掛ける。
『・・・眠ったわ。』
娘の寝室から、Betteがやってきた。
『何か飲む?』
キッチンに立つ彼女の姿にも、もう見慣れた。思わず笑みが零れる。
『なに?』
Betteが笑顔で尋ねる。
『ううん、別に。』
笑いながら、Tinaが席を立つ。
『何よ?気になるじゃない。』
笑顔のまま、尋ねるBette。
チン、と タイミング良くグラスの弾く音が響く。
『前にね、ほら、ここに越して来る時、Jamesも来ない?て誘ったら・・・。』
『あー、あったわね。私がしばらくはTinaに養って貰うからって言った。』
『そしたら皆が笑って。・・・なんで皆、笑ったのかしら?』
ワインを注ぎながら、Betteが尋ねた。
グラスのなかで、淡く黄色い泡が楽しげに弾けている。
『貴女が仕事人間だからよ。』
Tinaは歩み寄り、Betteに優しく抱きつく。
『今の私を見たら、やっぱり笑うかしら?』
少し拗ねた声で、Betteは尋ねる。
Tinaの少し裾長の袖を、指先でそっとなぞる。
『そんなことないわ。貴女はなんでも極める人だから。』
そう言うと、Tinaは少し背伸びをして、彼女の首筋に優しくキスをした。
Betteは嬉しそうに振り返り、そして二人は抱き合った。
『ねぇ・・・結婚式、いつにしようか。』
唐突な話に驚き、Tinaは思わずBetteの顔を見上げ、目を丸くした。
さっきの心を 読まれたかのような気分だ。
Betteはそっと彼女にグラスを渡し、自らも少しだけワインを口にする。
『どうせなら、ここでしたいわ。皆も呼んで。』
LAの夜、Betteが言った言葉は、本物だったとTinaは改めて悟った。
『・・・忘れられたかと思ってた。』
満面の笑みで、Tinaが答える。
『忘れるわけないでしょう?愛する人が忙しそうだから、奥様は気を利かせて待ってたのよ。』
Betteが笑う。
グラスを置き、甘えるように、Tinaが彼女にキスをした。
二人は腕を絡ませ、歩きながら何度もキスをした。
Tinaが寝室のドアにもたれかかり、Betteを受け入れる。
Betteは、右手をそっとTinaの膨らみの元へと滑らせる。
彼女の甘い吐息が、耳元で聞こえた。
もう一方の手で、柔らかな頬を優しくなぞる。
雪が深々とカーテンの隙間から降り積もっているのが見える。
二人は、更に奥へと唇を押し当てた。
飲んだばかりの甘いワインの香りが、鼻腔をくすぐる。
背中で感じる寝室のドアが、冷たく心地好い。
二人はドアに身体を押し当て、そして身を委ねた。
Betteは一瞬膨らみから悪戯に手を緩め、そのままドアノブへと手を伸ばす。
小さくカチリと音を立て、寝室が開いた。
窓の向こうに、白銀の世界がチラチラと見える。
深夜にも関わらず、一際白がぼんやりと明かりを照らしていた。
『今日は寒いから、温まりましょ・・・』
暗闇でBetteの囁く声が小さく聞こえ、そして静かにドアが閉まった。
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March 07, 2011
Season7-3
飛び飛びになってるSeason7の妄想物語の続編です(^▽^;)
前作を忘れがちになってる方は、Season7-1、7-2を復習しつつ
読んで頂けるとより読みやすいと思います(´_ _`)スミマセン
あくまでSeason0とは違い、Tibetteに焦点を当てつつも、Lのキャスト
全員を登場させて進行していく予定です。
Tibetteファンの皆さんも、その気持ちで読み進めていただければ嬉しいです。
pikari
☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜
薄明かりの部屋で、今日も変わらずモニターを睨みつける。
画面越しに写った、遮光カーテンからうっすらと漏れる光。
ふと、それを見つけ、Dylanは背伸びをした。
今日は、何曜日の何時だろう。連日の徹夜で頭がぼんやりしている。
あと1時間もすれば、編集作業も終わりかな。
再び椅子に腰をおとした時、電話が鳴った。
見慣れない番号だ。
・・・ハイ。
少し煩わしそうに出ると、相手の電話から外気を感じた。
Kitからだった。
事の成り行きを聞き、早々に電話を切ると、車のキーだけ握りしめ
Dylanは部屋を飛び出した。
夕方、学校前。
Betteが娘の姿を捉えると、クラクションを軽く鳴らす。
アンジーはいつもと様子が違うように見えた。
俯き加減に、トボトボとした様子でこちらに向かってくる。
どうかしたの?
彼女がドアを開けてすぐに、Betteは尋ねた。
・・・なにも。
俯いたまま、車に乗り込む。
誰かと喧嘩でもしたの?
うん・・・アンジーが小さく頷く。
ママB、お話聞いてあげるよ?
サイドブレーキを踏み、ハンドルから手を外すと、娘を真っすぐ見つめた。
ううん、大丈夫。
娘はTinaに似た芯の強い表情で顔を上げ、じっと母を見つめた。
小さな不安が Betteをかすめた。
今日の夕飯は、カレーにしたのよ。
母はわざと明るい声を出し、ハンドルを強く握りしめた。
見慣れない天井を見つめ、Helenaは目を覚ます。
・・・あれ?
起き上がろうとするが、同時に激しい動悸と吐き気に襲われる。
シーツに別の軋みを感じ、薄目を開けたまま、ベッドの脇に目をやる。
と、そこにはぐっすり眠るDylanの姿があった。
・・・病院だった。
点滴の冷たさで、ようやく事態を飲み込めてきた。
Dylanはまだ目覚めない。余程疲れた様子だ。
でも何故彼女が…?
車のキーを握りしめたままの手に触れてみる。ピクリとも動かない。
・・・なんなの?
ふいに怒りと悲しみが同時に込み上げ、Helenaは叫び声を上げたくなった。
口を真一文字に結び、眠るDylanを睨みつける。
それでも目覚めない。
Helenaはわざと大きな溜め息と寝返りを打ち、再び固いベッドに潜り込んだ。
Dylanが目覚めると、Helenaはまだ眠っていた。
彼女の髪に触れる。彼女のお気に入りのシャンプーの香りがした。
しばらくの間、Helenaの寝顔を見つめていた。
編集作業で使っていた、素材の画像と 彼女の寝顔が交互に脳を刺激する。
そんな時、Kitからメールが入った。
お見舞いを丁重に断り、お店は申し訳ないけれど 彼女はしばらく休ませると打った。
『 なんでいるの? 』
驚いて顔を上げると、疲れた顔をしたHelenaが見つめていた。
Kitから電話を貰ったの・・・。
だから?
・・・だからって。
Dylanは、言葉を詰まらせる。
もう、平気よ。迷惑をかけたみたいでゴメンなさい。もう私、平気だから。
そう言ってHelenaは身体を起こそうとした。
再び、激しいめまいと吐き気に襲われ、思わず目頭を押さえる。
そんな彼女の様子に、Dylanは悲しげに呟いた。
私のせいで、荒れていたの?
・・・黙ったまま、Helenaはシーツを握りしめた。
頬を勝手に生暖かいものが伝った。
眠れない日々が続いていた。
仕事をやみくもにこなせば、忘れられると思った。
Jennyやみんなを殺したい位憎んだ。
そして誰よりも、彼女を信じられなくなった自分を憎んだ…。
そうよ、あなたに 二度も裏切られたせい。
本心と真逆の言葉を吐き出した。
鍵を握りしめたまま、Dylanは俯いたまま呟く。
私は・・・どうすればいい?
窓から差し込む優しい光とは対照的に、二人の間に重く長い沈黙がのしかかる。
もう、いいから帰って。
Helenaが呟く。
しかし、Dylanはいっこうに立ち上がろうとはしなかった。
廊下を走る看護婦の足跡が聞こえ、そして静寂だけが侘しく残った。
眠らない街、NY。
夜景を見ながらはしゃぐ、タクシー内のAliceは一人、空元気だ。
そんな様子に気付きつつ、TinaとBetteは黙って見守っていた。
誰よりも、Aliceの幸せを願っている二人。
Tashaの一件について 詳しく訊かなかったが、自分達がJamieとの事を
けしかけた形になったのかもしれない、とBetteは気に病んでいた。
五番街の通りを少し入った場所に、二人がたまに行くBarがあった。
洗練された雰囲気と人。
そこはLAとは全く違い、自分達には 少し馴染みにくい場所。
奥から2番目に 少し広めのテーブルを見つけ、店内を歩く。
この街に住んで以来、Tinaは忙しいし、ビアンバーにはあまり詳しくないのよ。
Betteは、腰を掛けながら話した。
じゃぁ、久しぶりの夜の外出なんだね。
大切な親友の為にも、退屈な二人には決してならないで、と作り笑顔をするAlice。
そこに、三人組の女性の一人が声をかけてきた。
ここ、空いてるなら一緒に座らせて貰える?
構わないけど、、、
と、答えたBetteの横へ嬉しそうにその中の一人が座る。
Aliceが耳打ちをしてきた。
Tina、ヤバいよ。ヒレ肉に見えちゃってる。
・・・?
Aliceの言ってる意味がよく解らなかったが、見知らぬ彼女が確実にBetteを見つめている事には気付いた。
ちょっと、Tina。いいの?
良い気分はしないものの、Tinaは 黙ったままAliceを見つめる。
相変わらずBette自身は、そんな彼女の様子に気付いていないようだ。
そこへ、いかにも一見(いちげん)さん といった様子の女性が一人、話しかけてきた。
もしかして、Alice Pieszeckiさんですか?
子供のような、あどけない顔立ち。どうやらアジア人のようだ。
面倒だな、と思いながらも、笑顔を作りAliceは応えた。
彼女は亜美と言った。NY在住の日本人留学生らしい。
人懐っこい彼女は、Aliceの隣へ勝手にちょこんと座った。
よかったら、もう少しお話させて下さい。私、テレビ局に興味があって。
珍しく目を泳がせ、Tinaに助け船を求めるAlice。
しかしTinaはどこ吹く風、といった様子で
Betteを口説こうとしている女性をおつまみにして 飲んでいた。
当のBetteは、夕方見た 娘の表情が忘れられずにいた。
バーボンに浮かぶ氷がゆっくりと溶け、グラスの中でカラリと揺れる。
指先でそっとグラスの縁をなぞると、指先に微かな音色を感じた。
前作を忘れがちになってる方は、Season7-1、7-2を復習しつつ
読んで頂けるとより読みやすいと思います(´_ _`)スミマセン
あくまでSeason0とは違い、Tibetteに焦点を当てつつも、Lのキャスト
全員を登場させて進行していく予定です。
Tibetteファンの皆さんも、その気持ちで読み進めていただければ嬉しいです。
pikari
☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜
薄明かりの部屋で、今日も変わらずモニターを睨みつける。
画面越しに写った、遮光カーテンからうっすらと漏れる光。
ふと、それを見つけ、Dylanは背伸びをした。
今日は、何曜日の何時だろう。連日の徹夜で頭がぼんやりしている。
あと1時間もすれば、編集作業も終わりかな。
再び椅子に腰をおとした時、電話が鳴った。
見慣れない番号だ。
・・・ハイ。
少し煩わしそうに出ると、相手の電話から外気を感じた。
Kitからだった。
事の成り行きを聞き、早々に電話を切ると、車のキーだけ握りしめ
Dylanは部屋を飛び出した。
夕方、学校前。
Betteが娘の姿を捉えると、クラクションを軽く鳴らす。
アンジーはいつもと様子が違うように見えた。
俯き加減に、トボトボとした様子でこちらに向かってくる。
どうかしたの?
彼女がドアを開けてすぐに、Betteは尋ねた。
・・・なにも。
俯いたまま、車に乗り込む。
誰かと喧嘩でもしたの?
うん・・・アンジーが小さく頷く。
ママB、お話聞いてあげるよ?
サイドブレーキを踏み、ハンドルから手を外すと、娘を真っすぐ見つめた。
ううん、大丈夫。
娘はTinaに似た芯の強い表情で顔を上げ、じっと母を見つめた。
小さな不安が Betteをかすめた。
今日の夕飯は、カレーにしたのよ。
母はわざと明るい声を出し、ハンドルを強く握りしめた。
見慣れない天井を見つめ、Helenaは目を覚ます。
・・・あれ?
起き上がろうとするが、同時に激しい動悸と吐き気に襲われる。
シーツに別の軋みを感じ、薄目を開けたまま、ベッドの脇に目をやる。
と、そこにはぐっすり眠るDylanの姿があった。
・・・病院だった。
点滴の冷たさで、ようやく事態を飲み込めてきた。
Dylanはまだ目覚めない。余程疲れた様子だ。
でも何故彼女が…?
車のキーを握りしめたままの手に触れてみる。ピクリとも動かない。
・・・なんなの?
ふいに怒りと悲しみが同時に込み上げ、Helenaは叫び声を上げたくなった。
口を真一文字に結び、眠るDylanを睨みつける。
それでも目覚めない。
Helenaはわざと大きな溜め息と寝返りを打ち、再び固いベッドに潜り込んだ。
Dylanが目覚めると、Helenaはまだ眠っていた。
彼女の髪に触れる。彼女のお気に入りのシャンプーの香りがした。
しばらくの間、Helenaの寝顔を見つめていた。
編集作業で使っていた、素材の画像と 彼女の寝顔が交互に脳を刺激する。
そんな時、Kitからメールが入った。
お見舞いを丁重に断り、お店は申し訳ないけれど 彼女はしばらく休ませると打った。
『 なんでいるの? 』
驚いて顔を上げると、疲れた顔をしたHelenaが見つめていた。
Kitから電話を貰ったの・・・。
だから?
・・・だからって。
Dylanは、言葉を詰まらせる。
もう、平気よ。迷惑をかけたみたいでゴメンなさい。もう私、平気だから。
そう言ってHelenaは身体を起こそうとした。
再び、激しいめまいと吐き気に襲われ、思わず目頭を押さえる。
そんな彼女の様子に、Dylanは悲しげに呟いた。
私のせいで、荒れていたの?
・・・黙ったまま、Helenaはシーツを握りしめた。
頬を勝手に生暖かいものが伝った。
眠れない日々が続いていた。
仕事をやみくもにこなせば、忘れられると思った。
Jennyやみんなを殺したい位憎んだ。
そして誰よりも、彼女を信じられなくなった自分を憎んだ…。
そうよ、あなたに 二度も裏切られたせい。
本心と真逆の言葉を吐き出した。
鍵を握りしめたまま、Dylanは俯いたまま呟く。
私は・・・どうすればいい?
窓から差し込む優しい光とは対照的に、二人の間に重く長い沈黙がのしかかる。
もう、いいから帰って。
Helenaが呟く。
しかし、Dylanはいっこうに立ち上がろうとはしなかった。
廊下を走る看護婦の足跡が聞こえ、そして静寂だけが侘しく残った。
眠らない街、NY。
夜景を見ながらはしゃぐ、タクシー内のAliceは一人、空元気だ。
そんな様子に気付きつつ、TinaとBetteは黙って見守っていた。
誰よりも、Aliceの幸せを願っている二人。
Tashaの一件について 詳しく訊かなかったが、自分達がJamieとの事を
けしかけた形になったのかもしれない、とBetteは気に病んでいた。
五番街の通りを少し入った場所に、二人がたまに行くBarがあった。
洗練された雰囲気と人。
そこはLAとは全く違い、自分達には 少し馴染みにくい場所。
奥から2番目に 少し広めのテーブルを見つけ、店内を歩く。
この街に住んで以来、Tinaは忙しいし、ビアンバーにはあまり詳しくないのよ。
Betteは、腰を掛けながら話した。
じゃぁ、久しぶりの夜の外出なんだね。
大切な親友の為にも、退屈な二人には決してならないで、と作り笑顔をするAlice。
そこに、三人組の女性の一人が声をかけてきた。
ここ、空いてるなら一緒に座らせて貰える?
構わないけど、、、
と、答えたBetteの横へ嬉しそうにその中の一人が座る。
Aliceが耳打ちをしてきた。
Tina、ヤバいよ。ヒレ肉に見えちゃってる。
・・・?
Aliceの言ってる意味がよく解らなかったが、見知らぬ彼女が確実にBetteを見つめている事には気付いた。
ちょっと、Tina。いいの?
良い気分はしないものの、Tinaは 黙ったままAliceを見つめる。
相変わらずBette自身は、そんな彼女の様子に気付いていないようだ。
そこへ、いかにも一見(いちげん)さん といった様子の女性が一人、話しかけてきた。
もしかして、Alice Pieszeckiさんですか?
子供のような、あどけない顔立ち。どうやらアジア人のようだ。
面倒だな、と思いながらも、笑顔を作りAliceは応えた。
彼女は亜美と言った。NY在住の日本人留学生らしい。
人懐っこい彼女は、Aliceの隣へ勝手にちょこんと座った。
よかったら、もう少しお話させて下さい。私、テレビ局に興味があって。
珍しく目を泳がせ、Tinaに助け船を求めるAlice。
しかしTinaはどこ吹く風、といった様子で
Betteを口説こうとしている女性をおつまみにして 飲んでいた。
当のBetteは、夕方見た 娘の表情が忘れられずにいた。
バーボンに浮かぶ氷がゆっくりと溶け、グラスの中でカラリと揺れる。
指先でそっとグラスの縁をなぞると、指先に微かな音色を感じた。