The L Word Season7

June 09, 2012

The L Word Season7-11

毎度毎度、お待たせしてしまって、申し訳ないです(T∀T)
そういやさぁ、Season7って途中で終わっちゃったの
って思ってる方も、中にはおられるかも?
でも、終わってません。しっかり完結させるつもりでおりますので、
忘れた頃に読み直してくださると、嬉しいです(´_ _`)

前の内容で、記憶が薄れちゃった方は、コチラ
 The L Word Season7 (10) 
をクリックして頂くと、過去のものも一気読み出来ますので、よかったらどーぞ(^▽^;)

・・・では、Season7-11を、お楽しみ下さい



☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜



〜Paris。

ホテルのラウンジに落ちる陽射し。
昼間のホテルは、ビジネスマンも出勤中とあってか、静かな空間と化している。
近くの広場では、外国人観光客が、しきりに写真撮影をしていた。

久しぶり、と手を振り腰を上げた彼女の笑顔は、あの日と変わらなかった。
立ち上がり、ハグをする二人。
懐かしい香り。…いいえ何も知らなかった。当時から彼女は謎めいてたから。
むしろ辛い思い出の方が多いというのに、彼女の付けるエキゾチックな香水の香りが
Jennyをあの日の自分へと誘う(イザナウ)。

『噂は、かねがね聞いてるわよ。』
Marinaが笑う。
その目に吸い込まれぬように、Jennyはテーブルへと目線を落とし、腰掛けた。
『そう?自分の映画を乗っ取られた、間抜けな監督って事で有名なの?笑っちゃうわ。』
俯くJennyの長い睫毛が、微かに風に揺れる。
続けてMarinaも腰を落としながら、崩れぬ笑顔のまま、真っ直ぐに彼女を見つめた。
『そんなこと、ないわよ。』
すらりと長い腕を伸ばし、Jennyの髪をさりげなくなぞろうとする。
しかしJennyは彼女の手を遮るかのように、テーブルに置かれた台本を手に取った。

『髪、伸ばさないのね?似合っていたのに。』
テーブルに肘を付いたまま、Marinaは再度Jennyを見つめた。
『コーヒーを。』
Jennyは黙ったまま、近くにいた店員を呼び止め、オーダーをする。
一瞬、冷たい空気が、二人の前を通り抜ける。

『仕事の話をしましょう。』
真っ直ぐMarinaを見つめ、Jennyは静かなトーンで語りかけた。
『そうね。』
Marinaは、笑顔を崩す事なく、台本に視線を落とした。

 

〜LA。

慌ただしい引っ越し作業も、仲間がいるだけで助かるもの。
例え業者に任せきりであっても、気分的に変わるものだ。
引っ越しも、滞りなく終わった。
また、アンジーは転校生として、新学校へ通い始めた。
Tinaは、相変わらずバタバタとしているが、新生活は、落ち着きを取り戻しつつあった。

『・・・折角、LAに戻ったのだから。』と、
Betteには、MOCA(美術館)の専属curatorや、UCLAへの返り咲きの話まで来ていた。
しかし、彼女は不思議とあまり未練がないようで、アッサリと断り続けていた。
Betteにはやりたいことがあった。
今を逃すと出来なくなること。
それをTinaに話したかった。
そして、あの事も・・・。
『今日も、帰って来られないのかしら。』
夕食の支度をしながら、Betteはため息をつく。
ふと、家を任せきりにしていた頃の自分と、Tinaの寂しそうな笑顔を思い出した。

一方Tinaは、Focus Futures 新支店の役員として、多忙を極めていた。
役員とは名ばかりの、設立したての会社。
それこそ、事務員に任せていたような庶務的な事まで、見なければならない状態。
家に帰れない日が、連日続いた。
デスクに軽く腰掛け、飲みかけの冷えた珈琲を、溜め息混じりに口にする。
積み上げられた書類。
疲れた肩をそっと、片手で揉み解す。
目線をふと斜めにやると、家族3人の写真が目に入った。
『・・・よし、やりますか。』
珈琲を一気に飲み干し、唇を結び直して、Tinaは部屋のドアを勢い良く開けた。



〜Paris。

打ち合わせも順調に進み、気が付くと、外はすっかり陽が落ちていた。
『今日は、この位にしない?』
Marinaが、彼女に笑顔を向ける。
その笑顔も心なしか、疲労が見えた。
『そうね。後はエージェント達も交えて、本格的にやりましょう。』
伏し目がちのまま、Jennyは台本を閉じる。

『食事でもとらない?』
そう話しかけたのは、意外にもJennyの方からだった。
『そうね。じゃぁ・・・最近見つけたお勧めのレストランがあるから、そこに行かない?』
『あなたに任せるわ。ただ・・・』
『何?』
立ち上がりながら、Marinaが尋ねる。
『今の私、レストランには相応しくない姿だから、着替えたいのだけど。』
『構わないわ。じゃ私はここで待っていればいい?』
一瞬、小さな沈黙がJennyを包む。
きっとその一瞬を、彼女は気付いていないだろう。
『ええ、そうね。悪いけど。』
そう、か細い声で告げ、Jennyは立ち上がった。


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February 15, 2012

The L Word Season7-10

前の内容で、記憶が薄れちゃった方は、コチラ
 The L Word Season7 (9) 
をクリックして頂くと、過去のものも一気読み出来ますので、よかったらどーぞ(^▽^;)

・・・では、Season7-10を、お楽しみ下さい





翌日。快晴。日差しが眩しい。窓から見える雪の名残が輝く。
絶好の引越日和だ。
引越は、Betteが全て業者に頼み、滞りなく進んだ。
自分達の少しの荷物をスーツケースに詰め、空港へと向かう。
アンジーは友達との別れに少し泣いていた。
最初、一足先にBetteとアンジーだけが向かう予定だったが、
仕事が早めに片付いた事で3人揃って、LAに帰れるようになった。
久しぶりに乗る飛行機。
たった数時間のフライトだが、何となく気持ちが弾んでいた。

〜LA。
Planetのドアが勢いよく開く、とShaneが明るい表情で入ってきた。
周りをキョロキョロと見渡す。
そこに笑顔を振り撒きながら、Helenaが近づく。
『いよいよね!』
鼻先をいじりながら少し照れ笑いをするShane
Kitは?』
『今奥にいるわ。』
『そっか、ちょっと行ってくるね!』
Shaneは足早にKitのスタッフルームへ向かう。
その姿がいつもより凛々しく、逞しい。
・・・? 
Helenaは一瞬不思議に思ったが、きっと彼女達が帰ってくるからそう見えたのね、
と踵を返し、キッチンへと消えた。

ドアをノックすると、『どうぞ』と明るい声が聞こえた。
部屋には、SONYと娘のマリア、そしてKit。既にAliceの姿もあった。
『なんだ、みんな早いじゃん』
笑顔で部屋に入る。
『ちょっとShane、いつもよりおめかししてない?今度は空港のお姉さんでも落とすつもり?』
Aliceが、笑いながらShaneを小突く。
Shaneは、シャツの襟を立てながら真顔で
『そういうのは、もう、卒業したんだ。』と答えた。
その台詞にみんなが笑う。
『またまたー。今度はいつまで続くやら。』
『ね、ね。そんな事より、もう行かないと。空港に着いちゃうわ。』
バタバタとネックレスを首にかけ、Kitが車のキーをSONYに渡した。


手荷物を無事受け取り、Bette達が出口へと歩く。
アンジーは涙も乾き、笑顔で自分用のカートを押している。
と、出口にKit達の姿が見えた。
自然と皆に笑顔が浮かぶ。

『お帰り!』
Shaneが叫ぶ。
『ハーイ!アンジー、元気だった?』
Kitがアンジーを抱きしめる。
そこに、BetteTinaが笑顔で近づいてきた。
『ハーイ久しぶり。みんな元気だった?』
TinaAliceとふざけてハグをする。
BetteShaneとハグをし、続けてKit、SONYとハグをしてゆく。
『なんだか、不思議ね。』
照れたようにBetteが笑う。
『何が?』
『だって、昨日NYに行って、今日帰ってきた気分なんだもの。』
『そう?私は随分待たされたって思うよ?』
笑いながら、ShaneAliceの肩に首を擡げる。
『あんたが一番淋しがってたもんね。』
笑顔でShaneの肩に手を回す。

『ところで、Helenaは?』
『今お店を見てくれてるわ。その話は後でじっくりね。時間はたっぷりあるんだから。』
とびきりの笑顔でKitが言い、アンジーのカートに手をかけた。

空港の外には雲ひとつない、抜けるような青空。
眩しい光がBetteの視界を遮る。
振り向くと、笑顔のTinaと目が合い、目配せをした。
前を向いたBetteは大きく息を吸い込み、新たな場所へと歩きだした。


〜フランス、パリ
曇り空が、より人をアンニュイな気分にさせるわ・・・。
久しぶりにタバコをふかしながら、Jennyは街の喧騒を窓から眺めている。
今日は、いよいよ久しぶりにあの人に会うのね。
この世界に身を置いてから、いろんなことがあった。
裏切りと陰謀、嫉妬そして失望。良い事の方が少なかったと思う。
それでも私が続けてこられたのは、やっぱり人生の岐路に立つと
必ずあの人が私の前にいたから・・・。
ゆらめく煙を眺めながら、ふと小さく笑う。
・・・バカね。今更なにを言うつもり?
と、Jennyの携帯が鳴る。
相手は、取引先のエージェントからだった。
『解ったわ。今晩19時。RITZホテルね。ええ、ヴァンドーム広場なら迷わずに行けるわ。』
灰皿に置いたタバコの煙が、天井へと緩やかに伸びてゆくのをJennyは見つめ、
そしてあの日の出来事をぼんやりと回想していた。



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January 20, 2012

Season7-9


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誰もいない朝。
木漏れ日の落ちるキッチン。冷たいフローリング。
ここ最近ShaneJennyの家の中は、静まり返っている。
Jennyはここのところ外出中が続いている。
聞くところによると、新たな新作映画が大手配給会社で決まったらしい。
詳しくはまたね、と言っただけで、Jennyはパリへ向けて出発した。
Shaneは・・・と言えば、暇さえあればジムに通う日々。
トレーニング後には、爽やかな笑顔でplanetにやってくる。
Jennyのいない静かな家に一人だというのに、何かつかえが落ちたような、
そんな表情を見せている。

コーヒーの香りが 心地良く充満したPlanet。
いつもの活気のある店内。
Sonyに娘のマリアを預け、Kitは今日も元気よく 新作のチーズmuffinを作る。
カウンターには、彩り鮮やかな赤ピーマンやオレンジ達が、艶やかに光っている。
カウンター越しに店内を見ると、そこには笑顔の戻ったHelenaが、颯爽とコーヒーを運んでいた。
Dylanとはまだ一緒には住んでいないようだが、こちらも憑き物が落ちたような、
澄んだ笑顔で 生き生きと働いている。
Planetの店内にも、明るい陽の光が差し込んでいた。


〜NY。
Tibetteが引越しに向け、動き出した。
NY生活(?)においての休息と、仕事を終えたAliceは、一足先にLAへと帰っていった。
亜美への想いを何も告げぬまま、彼女は日本へ送り出した。
・・・あの日、別れのあの日。
いつもなら、形振り構わず相手に縋り付くAliceが、彼女にはそうしなかった。
笑顔で見送ったよ、そう話していた。
その横顔がいつも以上に切なく、弱々しくすら見え、Aliceの本意がなんだったのか、
Bette達は触れられずにいた。

Aliceが帰ったNYは、静かなものだ。
吹雪も一緒にどこかへ飛んで行ってしまったような、穏やかな冬空。
でも、どこか淋しく感じる。
道路脇に出来た薄い氷の膜を、アンジーとその友達が大切そうに運んでいる。
真っ青な空に浮かぶ楕円型の雲が、緩やかに形を変え、伸びてゆく。
冷たくも優しい風が、街を包む。

会社から正式な辞令が下り、Tinaは取締役となった。
Betteは、娘の転校手続きと転居先の物件選びに、ばたついている。
元々住んでいた彼女達の家には、現在Kit夫婦が住んでいる。
出て行こうか?と、気を揉んでくれたKitだったが、さすがにそれには気が引け
新たな家を探した。



目まぐるしい毎日が過ぎ去り、いよいよ明日が引越当日という日を迎えた。
たった数年のNY生活。それでも、淋しさが影を落とす。
クラスメイトに貰った餞のカードが、Tibette家族の足跡を確かに物語っていた。
初めて経験させてしまう、アンジーの転校。
クラスメイトとの別れを淋しがるアンジーは可哀相だったが、逆に悲しい別れとなってくれた事が
二人の母にとって、今は嬉しく思っていた。


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December 07, 2011

Season7-8

休校で近所の友達の家に出掛けたアンジー。
Tinaは、昨日の大雪の影響で内勤となっていた。
『・・・でね、あの子、クラスのイジメっ子にこう言ってやったらしいわ。』
コーヒーをテーブルに置き、Betteが仁王立ちになる。
『あなた、知らないの?NY州での同性婚は合法なのよ。』
Aliceが手を叩いて爆笑した。
『まるでアンタそっくりじゃん!』

その様子をTinaが楽しそうにキッチンから眺める。
『しっかしさぁ、いまどきの子供は一端の言葉を知ってるよね。』
けしかけるようにAliceが笑う。
『それで?相手はなんて?』
『じゃぁ、お前んちの親はちゃんと結婚してんのかよって。』
『あら、言うね〜。』
零れそうになったコーヒーを拭いながらAliceは続ける。
『それじゃ、早いとこ結婚式を挙げないと。』

・・・なるほど。昨夜の事をTinaは思い出していた。
それでBetteは急に結婚式の話をし出したのね・・・。
苦笑いをしながら、冷蔵庫のドアを開ける。
冷たく冷えたミルクを取り出し、ほんの少し、コーヒーに入れる。
『で?貴女は?例の彼女とどうするの?』
座り直したBetteは、Aliceをじっと見つめる。
『さぁ。』
口元にカップを当てたまま、Aliceは答える。
『さぁって・・・あなたそれでいいの?』
『でもさ、もうじき日本に帰るんだってさ。』
『えっ?帰国しちゃうの?それでいいの?』
追い撃ちをかけるように台所越しからTinaが尋ねる。
『いいもなにも。私にゃ決められないじゃん。』
むっとした声で、Aliceが答える。
『違うのよ。私たちはあなたの気持ちを聞いているだけで・・・。』

黙ったまま、立ち上がるAlice。その目は二人を見ようとしない。
『ご馳走様。さてと、今日のあたしは忙しいのよ。またね。』
逃げるように玄関へ そそくさと向かう。
その後姿を、二人は心配そうに見つめ、そして何も言わないまま互いを見つめ合った。


〜LA。
ShaneはBedに一人寝転び、何かを読んでいる。
開け放した机の引き出し。
少し散らかった引き出しの中身が、はみ出しているのが見える。
Shaneが手にしているものは、以前Jennyから受け取ったMollyの手紙だった。
幾度となく読み返しただろう、細かなシワが手紙を泳いでいる。
彼女の書いている、この有効期限はいつまでだろうか。

横たわったまま寝返りを打ち、Shaneは天井を見上げた。
『そろそろ私達も 成長する頃なのかもよ。』
あの日のKitの声が優しく響く。
そうだ、自分から変わらないと。でも・・・今の自分に何が出来るのだろう。
Bedの脇に無造作に置かれた新聞。それにふと目をやる。
何気にそれを手に取り、パラリとめくる。
と、Shaneは一点を凝視していた。
それは、とある大会の出場者募集の文字。
Shaneは深呼吸をすると、唇を噛み締めたまま、携帯の番号を押しはじめた。


〜病院。
Dylanの献身的な看病もあって、Helenaは無事退院する運びとなった。
しかし、互いに多くを語らぬ日が続いていた。
二人の間で、何も進展する事もなかった。
『本当にもう、大丈夫だから。』
荷物を片付けながら、Helenaは重い口を開いた。
『うん、、解ってる。』
顔を上げることなく、DylanはBedのシーツを片付けている。

『・・・・・・ありがとう。』
少し、驚いたようにDylanが顔を上げた。
窓から柔らかい風が入り、カーテンをそっと揺らす。
木漏れ日が真っ白なシーツを照らしている。
『・・・・・ううん。   よかった。』
そこには、久しぶりに見る彼女の小さな笑顔があった。
その顔をじっと見ていると、Helenaは突然涙が零れてしまった。
見る間に、景色がかすんでゆく。

『なんで?・・・・え?なんで泣くの?』
シーツを持ったまま、Dylanが彼女の元へ歩み寄った。
背中に優しい光と影が揺れている。
『わかんない。ただ、、、、』
『・・・ただ?』
零れ落ちる涙を拭いながら、Helenaは絞り出すように声を出した。
『ただ、、、、ずっと貴女に逢いたかったの。』
すると、真白いシーツにフワリとHelenaが包み込まれた。
抱きしめた彼女の肩が震えている。
『ゴメン・・・。』
彼女を握りしめたDylanの指もまた 震えていた。
『信じて欲しいって、もう言わない。でもこれだけは言い続けるわ。』
真っ直ぐな目をDylanHelenaに向けた。
『あなたを愛してる。』
パタパタと、廊下を急ぎ足で歩く看護婦の足音が、小さく消えていった。


pikasama69 at 00:13|PermalinkComments(8)

November 01, 2011

Season7-7

LAとは違い、NYの冬はとても厳しい。
週末の予報よりも早く、今年は雪が降った。
引っ越した当初は、アンジーも物珍しさに目を丸め、はしゃいでいたが、
今年の雪は違った。
例年を遥かに超える積雪量で、学校は休校。
都市部にも、大規模な交通マヒが起きた。
撮影で連日泊まり込みだった、Tinaの機嫌は最悪だ。
予定を大幅に変更させる為、朝から缶詰で打ち合わせに入った。

〜夜。
NYの街は大渋滞に見舞われ、やっとの思いで自宅に到着する。
車を止め、足元に纏わり付く憎らしい雪を払いながら、玄関のドアを開けた。

『お帰りなさい。』
暖かい食事と、大切な家族が目に飛び込む。
愛する二人の笑顔を見ると、自然と疲労も緩んだ。
『ママの手、すっごく冷たいよ。』
アンジーに手を引かれ、笑顔で暖炉の前に座る。
小さな温もりのある両手は、冷え切ったTinaの心をも温めてくれた。

『さ、ご飯にしましょう。』
明るい声でBetteが声をかける。
『今日は、アンジーとママTの大好きな コラードグリーンのグラタンと、マスのグリルよ。』
『良いこと、あったからね。』
ウインクを交わす二人。
『何?ママTにも教えて。』
アンジーが、ちょこんと椅子に座る。
続けてTinaも座った。

アンジーは嬉しそうに、学校の話を始めた。
『今日、先生からも連絡があったのよ。』
そっくりな笑顔で二人はTinaを見つめる。

『・・・でね、そばかすLindaも、乱暴なJohn達も、もうしないって。』
『そう、よかったじゃない。みんなにちゃんと言えた?』
『うん、また意地悪言われるかもしれないけど、そしたらJohnがお前の事、守ってやるって。』
『そうなの、だからご褒美なのね。』
娘の向こう側で、潤んだ瞳をそっと拭うBetteが見える。
Tinaは、とびきりの笑顔を二人に向け、こう言った。
『じゃぁ、今夜はパーティーね!』



静かな夜。
いつもより、少し長めのバスタイムだ。
Tinaは、パジャマ姿でダイニングへと歩きながら、濡れた髪をタオルで乾かしている。
『・・・そういやさぁ、あんた達って結婚式、まだしてないよね。』
Aliceに言われた台詞を、Tinaはふと思いだした。
暖炉の前のソファーに、腰掛ける。

『・・・眠ったわ。』
娘の寝室から、Betteがやってきた。
『何か飲む?』
キッチンに立つ彼女の姿にも、もう見慣れた。思わず笑みが零れる。
『なに?』
Betteが笑顔で尋ねる。
『ううん、別に。』
笑いながら、Tinaが席を立つ。
『何よ?気になるじゃない。』
笑顔のまま、尋ねるBette
チン、と タイミング良くグラスの弾く音が響く。
『前にね、ほら、ここに越して来る時、Jamesも来ない?て誘ったら・・・。』
『あー、あったわね。私がしばらくはTinaに養って貰うからって言った。』
『そしたら皆が笑って。・・・なんで皆、笑ったのかしら?』
ワインを注ぎながら、Betteが尋ねた。
グラスのなかで、淡く黄色い泡が楽しげに弾けている。

『貴女が仕事人間だからよ。』
Tinaは歩み寄り、Betteに優しく抱きつく。
『今の私を見たら、やっぱり笑うかしら?』
少し拗ねた声で、Betteは尋ねる。
Tinaの少し裾長の袖を、指先でそっとなぞる。
『そんなことないわ。貴女はなんでも極める人だから。』
そう言うと、Tinaは少し背伸びをして、彼女の首筋に優しくキスをした。
Betteは嬉しそうに振り返り、そして二人は抱き合った。

『ねぇ・・・結婚式、いつにしようか。』
唐突な話に驚き、Tinaは思わずBetteの顔を見上げ、目を丸くした。
さっきの心を 読まれたかのような気分だ。
Betteはそっと彼女にグラスを渡し、自らも少しだけワインを口にする。

『どうせなら、ここでしたいわ。皆も呼んで。』
LAの夜、Betteが言った言葉は、本物だったとTinaは改めて悟った。
『・・・忘れられたかと思ってた。』
満面の笑みで、Tinaが答える。
『忘れるわけないでしょう?愛する人が忙しそうだから、奥様は気を利かせて待ってたのよ。』
Betteが笑う。
グラスを置き、甘えるように、Tinaが彼女にキスをした。

二人は腕を絡ませ、歩きながら何度もキスをした。
Tinaが寝室のドアにもたれかかり、Betteを受け入れる。
Betteは、右手をそっとTinaの膨らみの元へと滑らせる。
彼女の甘い吐息が、耳元で聞こえた。
もう一方の手で、柔らかな頬を優しくなぞる。
雪が深々とカーテンの隙間から降り積もっているのが見える。
二人は、更に奥へと唇を押し当てた。
飲んだばかりの甘いワインの香りが、鼻腔をくすぐる。

背中で感じる寝室のドアが、冷たく心地好い。
二人はドアに身体を押し当て、そして身を委ねた。
Betteは一瞬膨らみから悪戯に手を緩め、そのままドアノブへと手を伸ばす。
小さくカチリと音を立て、寝室が開いた。
窓の向こうに、白銀の世界がチラチラと見える。
深夜にも関わらず、一際白がぼんやりと明かりを照らしていた。
『今日は寒いから、温まりましょ・・・』
暗闇でBetteの囁く声が小さく聞こえ、そして静かにドアが閉まった。



pikasama69 at 00:37|PermalinkComments(19)

October 25, 2011

Season7-6

お待たせいたしました(笑)
・・・今回は頑張って、書いてみましたよ。
あれ?もう、忘れかけてますか?やっぱり遅い?
Season7-6です(笑)
やっぱりパリパリ、予定以上にepが増えそうな予感・・・(^▽^;)
みんなが飽きなければ。
pikariが飽きなければ(爆)

前のep忘れちゃったよっていうそこの貴女。
パソコンのトップページの左下にいってもらうと、Categories(カテゴリー)と

いう欄があります。そこに分けてありますので、そこから入って思い出しつつ
読んでいただけると嬉しいです。
ではでは、、、お楽しみ下さいマセマセ(*ノ∀`*)ゞ




☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜




『・・・そういう訳で、越す事になったからさ。』
Shaneに告げ、Aliceは勢い良く受話器を置いた。
満足げなその表情からは、うっすらと笑みか零れている。

亜美の部屋には、トランクに詰めただけのAliceの荷物が転がっていた。
Aliceは、彼女が学校に行ってる隙を見て、Bette達の家を行き来していた。
呆れるBetteをよそに、涼しげな面持ちで執筆活動を続けていた。
『気持ちが落ち着いたのなら、一度帰った方がいいんじゃない?』
という、Tinaの助言にも耳を貸そうとしない。
ライターは、どこにいても出来る。だからこの職業を選んだのだ。
『さてと。少しは整理でもしてあげますか。』
満足げな顔でAliceは立ち上がり、美味しそうに、残りのエスプレッソを飲み干した。



〜LA。
Aliceの電話を受け、Shaneは少し浮足立っていた。
その足でプラネットへと向かう。
と、入り口近くでKitとぶつかりそうになった。
『おぉっと!危ないわよ、あらっShaneじゃない。』
『ゴメンKit。・・・で、聞いた?』
『もちろん。』 笑顔のままKitが答える。
Aliceから
同時に発したその台詞に、二人がまた爆笑した。

『ところで、Jennyは?来てない?』
シャツをくしゃくしゃと掻きながら、Shaneが尋ねる。
『朝来たわよ。なんだか忙しそうに電話で打ち合わせをしてたけれど。』
『そっか。 あ、Helenaは?まだ休んでるの?』
『まだ。でも大丈夫よ。Dylanがついてるから。』
『お見舞い・・・行ったら邪魔になるかな?』
『そんな事ないわよ。退屈してると思うから、時間があるなら行ってあげて。』
Kitを呼ぶ声がキッチンから聞こえる。
『じゃ、お嬢ちゃん。良い一日を。』
『ありがとう。Kitもね。』
サラダボールを持ったまま、ウインクをしてKitが立ち去った。

仲間が誰もいないプラネット。
そんな日がTibetteがいなくなってからは、やはり多くなった。
みんな、変わっていくんだよな・・・。
カフェラテを1人飲みながら、成長していない自分をラテ越しに見つめる。
その影は頼り気なく、揺れている。
携帯を取り出し、壁紙をじっと見つめる。
肩を組み、とびきりの笑顔で笑うShane Shay
ふと、プラネットにひと際大きな風が店内を横切る。
・・・よし。
力強く立ち上がり、Shaneは自宅へと駆け出した。



〜NY。
会議室。ペン先を口元に当て、Tinaは考えこんでいた。
机の上を、柔らかなtouchで指先を滑らせる。
役員会議で可決されるのは間違いない。
・・・新たな経営者としての責任。
ペンを置き、顎に手を当てたまま、考えこむ。
心地好い風が開いた窓から滑り込み、無造作に置かれた書類の間をパタパタと揺らしている。
NYに来て、約2年。
嬉しい気持ちはあったが、ここに来てからの充実した日々を思うと、不安も過ぎった。
でも決めた事だ、やるしかない。
『私は大丈夫。』
ふうっと息を吐き、乱れた書類に手を伸ばす。
その視線の先には、笑顔でTinaを見つめる母子の写真があった。


夕食の献立を考えながら、Betteは一人暗い影を落としていた。
夕暮れ前のスーパーは、主婦で一杯だ。
食材を、カートの中のカゴに乱雑に入れてゆく。
娘の今後が気掛かりだった。
もちろん、今迄も考えなかったわけではない。
いつかはぶつかるであろう、偏見という壁。
『考えたって仕方ないじゃない。起こってしまった事実に対して私達は向き合った。
あとは彼女に任せる。そう決めたんだから。』
楽観的に話すTinaにも、少々腹が立った。
でも彼女が正しいのもわかっている。

商品をカウントするレジ音が、響く。
『・・・・です。』
Betteは深いため息をつく。
財布の中で笑う、娘の写真がいつもより切なく映った。
と、店員が少し小さな声で尋ねてきた。
『足りないなら、どれか返品しますか?』
その声でハッと我に返り、Betteは厳しい顔のままこう答えた。
『いえ、平気よ。お金も、うちの子も。』



pikasama69 at 07:00|PermalinkComments(13)

October 14, 2011

Season7-5

お待たせいたしました・・・。
Season7-5を書き上げました(笑)
ちょっとーpikari!!
毎回毎回 間が開き過ぎて、前のep忘れちゃったよっていう、そこの貴女。
ホントごめんなさい(T∀T)
パソコンのトップページの左下にいってもらうと、(携帯だと一番下かな?)
Categories(カテゴリー)と
いう欄があります。
そこにSeason7の各epがありますので、そこを読んで思い出しつつ
新作epを読み進めていただけると嬉しいです。
ではでは、、、(*ノ∀`*)ゞ




☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜




NYの夜。
人通りの多い道を抜け、薄暗い小道を走らせる。

雨がパラパラと降り始め、軽くワイパーを動かす。

昼間の出来事をTinaは思い出していた。

会議室。神妙な面持ちで、役員たちと話すTina

それは数年前から動き出しているプロジェクトだった。

そこに自分が関わってくるとは、当時の自分には想像も出来ないことだったが。

取締役、就任。

悪い話ではない。ただ・・・

また転勤となると話は違ってくる。

とりあえず、現段階では、株主総会の正式な日にちは確定しない事だけを
役員たちにお願いし、席を立った。

・・・Betteには どう話そう。ここのところ考えていたのはそれだった。

飛沫の音が大きくなる前に、明るい玄関が見えてきた。

車から降り、雨を避け少し背を丸めたまま、Tinaは玄関へと向かった・・・。



早朝。

あの日以来、亜美は執拗に追いかけてくる。

勢いで寝てしまった自分に後悔する日々をAliceは過ごしていた。

そんなことを知ってか知らずか、亜美は隣ですやすやと眠っている。

このまま、逃げ出してTina達の家に帰ろうか。

寝癖のついた前髪を何度も整え、そのまま顔をなぞる。

と、亜美が目を覚ました。

『起きたの?・・・早いね。今日はどこに行きたい?』

両手を天に上げ、背伸びをする。
可愛らしい素顔だ。国籍の違いからだろうか、実年齢より随分と若く見える。

『とりあえず、朝食を食べに行こっか。』

・・・Shaneの事、言えないな。

小さく苦笑いをして、Aliceは胸にシーツを巻いたまま、散らかった服に手を伸ばした。



NYに住んで1年。その割には聞き取りやすい、流暢な英語を亜美は喋る。

小さなアパートに暮らす彼女は、現在大学生。
日本では外語大学に通っているらしい。

家族構成、友達の話、学校生活。
出会ったばかりの相手に 亜美は何でも話してくれた。

閉鎖的な日本のゲイ事情からは、想像をかけ離れた彼女のキャラクター。

サンドウィッチをほお張る時に出来る、えくぼが可愛い。

アイスコーヒーを飲みながら、Aliceはいつの間にか受身になり、彼女の声に耳を傾けていた。





〜午後。

校舎には、柔らかいオレンジ色の陽が落ちている。

いつもは賑やかに聞こえるであろう、子供たちの声は遠い。

冷たい教室。

BetteTinaはそこに暗い影を落としていた。

『逃げるように、終わらせたくはないと思っています。』

Betteは重い口を開く。

担任のメガネが厭らしく光った。

『ただ、話し合って出した結果です。』



あの夜、深夜までかけて、二人で話した。

Tinaの転勤がこのような形で動き出すとは、Betteも考えていなかったが

それでも、半年後の異動は受けるべきだと合意した。

その移動先は・・・皮肉な事にLAだった。

Betteが静かに話す。

『とは言え、転校までにはまだ半年あります。
私達は、事態が悪化する前に改善策をとるべきだと思っています。
しかしこの件について、私達が子供たちの間に入って解決するカタチは取りたくありません。』

『放置するわけではなく、先生方の教育から、そして子供同士の話し合いによって

あの子はこれからの自分の立場を再認識し、そして強くなって欲しいと望んでいます。』


Tina
は、小さい机に差した陽の光を見つめながら、アンジーの笑顔を思い出していた。

『一度、子供たち同士で話し合う場を設けて戴けないでしょうか。』

足を組み返し、Betteは続けた。
『私達は、常にこの問題と直面して参りました。
それはレズビアンだから、という事だけではありません。
人種問題、格差社会等、差別というものが、世界中どの時代にも問題視されています。
だからこそ今のうちに、どんな人間にも無限の可能性がある、そして様々な環境や、
人間のあり方を素直に受け入れる心を教えて頂きたい。
その第一段階が、教育の場だと私達は考えております。』

小さく頷き、教師が静かに口を開いた。
『ご両親の思いは、よく解りました。
では、今度のホームルームでその時間を設けるよう、検討してみます。』

『よろしくお願いします。また転校の手続きについては、後日ご連絡いたしますので。』



ガラリと扉の開く音を立て、教師が入り口に立つ。

暗い廊下が、二人の影を更に長く伸ばしている。

Betteに続いて、Tinaが小さく一礼し、その場を後にした。

二人の後ろ姿に、迷いは消えていた。



pikasama69 at 00:04|PermalinkComments(12)

July 16, 2011

Season7-4

お待たせいたしました(笑)
もう、忘れかけてますか?大丈夫ですか?
Season7-4です(笑)
今のところ、予定以上にepが増えそうな予感・・・(^▽^;)
みんなが飽きなければ。
pikariが飽きなければ(爆)
ちょっとーpikari!!
間が開き過ぎて、前のep忘れちゃったよ!!っていうそこの貴女。
パソコンのトップページの左下にいってもらうと、Categories(カテゴリー)と

いう欄があります。そこに分けてありますので、そこから入って思い出しつつ
読んでいただけると嬉しいです。
ではでは、、、(*ノ∀`*)ゞ




☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜




Tibette達がNYに旅立って以来、Shane1人で過ごす時間が多くなった。

勿論彼女を放っておく人がいるわけもなく、多くの女性から声をかけられた。

しかし、Shaneの心はKitのあのセリフを聞いて以来、なびく事はなかった。

AliceNYに遊びに行ってしまい、ますます自分の時間が出来るShane

Jennyは相変わらず、執筆活動に勤しんでいる。

窓の外をキッチンの流しに腰掛けながら、ぼんやりと眺める日々。

静かな毎日だ。

表に子供たちの笑い声が聞こえる。

・・・・Shayは元気だろうか?

ふと、あの日一緒に暮らした短い時間を思い出す。

携帯を開き、Shayの映った写真を見つめながら、Shaneは小さく笑った。

『何、笑っているの?』

Hi ・・・Jenny、どう?まだ終わらないの?』

『えぇ、佳境に入ったところ。あと少しよ。紅茶、入れるけどあなたも要る?』

『そうだね、貰おうかな。』

『何を笑っていたの?』

『ん?・・・あぁ()  Shayの写真だよ。』

気恥ずかしそうに、携帯をJennyに渡す。

そこには肩を組み、笑うShane Shayが写っていた。

『・・・寂しい?』

携帯をそっと返すJenny

Shaneの横顔が、窓から挿す光の影に当たっている。

JennyはそんなShaneを優しく見つめる。

『・・・・そうだね。あの時は毎日が大変で、今思うともっと一日一日を大切にすればよかったなって思うかな。』

髪をくしゃくしゃと掻き上げながら、寂しそうに笑う。

『だったら、今からでもそう伝えればいいんじゃない?』

Jennyが優しく紅茶を注いでゆく。

その姿をShaneは、黙ったままぼんやりと見つめていた。




〜病院。

Helenaの入院が決まって以来、欠かすことなく毎日Dylanがやってきた。

何を会話するでもなく、当たり前のようにHelenaの食べやすいものを持ってきては

洗濯など、ひと通りのことを済ませてゆく。

そうして1週間が過ぎようとしていた。

最初はDylanの持ってきたものを、口にしようともしなかったHelenaだが

Dylanの献身的な看病と、ひたむきな愛情に少しずつ受け入れるようになっていた。

ある日、Kitが見舞いにやってきた。

『どう?調子は。随分顔色が良くなったようだけど。』

『心配かけてごめんなさい。まだ抜け出せないところはあるけど、でももうすぐ退院できるって。』

『心のバランスを取るのは難しいわね。私もあなたの気持ちが解るわ。』

HelenaKitと同じ、アルコール依存症の一歩手前と診断されていた。

Dylanは?来てるの?』

『今日は帰ったわ。』

『そうなの。ねぇ、Helena。そろそろDylanを許してあげたら?』

『・・・・・・。』

Kitは、Helenaが倒れたあの日の彼女の動向を、優しい口調で話した。

『あなた達は、通常では必要のない事まで経験してしまった。けれどそれでもあなた達は再会したの。そこに深い意味があるとは思わない?』

黙ったまま、Helenaは窓から見える晴れた空を見つめる。

雲が見つめ続けないと気付かないほど、ゆっくりと形を変えて動いていた。

『神は乗り越えられる者にしか、試練を与えないものよ。』

小さくため息をついて、Kitが笑った。

その目に小さな自分が輝いて映っていた。



NY

夕食の買物に出かけようとしているBetteの元に、一本の電話が鳴った。

・・・学校からだった。

『お子さんの件で、お話があります。』

担任は、そう短く話し出した。

先日感じた小さな胸騒ぎがBetteの中で大きく揺れ始める。

担任の話によると、小さないざこざが教室内で起こっているという事だった。

『私どもはご両親のことも存じておりますし、偏見といったものは持っておりません。

しかし、子供たちの間では、違和感を持っているというのが現状です。』

『ありがとうございます。でももし、学校内で、解決できないのでしたら、私どもが伺っても構いませんが。』

Betteは戸惑いを少し含めた声で答えた。

『いえ、ご両親にお越し頂くことで、ますます状況が悪化する場合もございます。』

『学校側といたしましては、穏便に済ませたいというのが本音でして・・・』

奥歯に物が挟まったような言い方をする担任。

『では、私達にどうしろと仰りたいのですか?』

Betteはつい苛立ちを担任にぶつける。

『いえ、私どもといたしましては、このような事実があります事をお伝えしたまでの事で、学校側と致しましても、今後も出来る限り対処して参りたいと・・・』

曖昧な回答に、Betteは大きくため息をつき、電話を切った。

いつかやってくるかもしれないと思っていた事だった。

ソファーに腰掛け、車のキーをテーブルに置く。

・・・どうすればいいのだろう?

落ち込んでいる場合ではない。

Betteはすぐに立ち上がり、急いでTinaの携帯番号を押し始めた。


 


 


 


 ・・・・・・みんな、ゴメン。Tinaが全く登場してないよね(^▽^;)
(てか書いてる本人も、仕上がってから気付いたwww)
嗚呼、きっとガッカリしてコメント薄になるだろうな・・・(T∀T)



pikasama69 at 00:55|PermalinkComments(12)TrackBack(0)

March 07, 2011

Season7-3

飛び飛びになってるSeason7の妄想物語の続編です(^▽^;)
前作を忘れがちになってる方は、Season7-17-2を復習しつつ
読んで頂けるとより読みやすいと思います(´_ _`)スミマセン
あくまでSeason0とは違い、Tibetteに焦点を当てつつも、Lのキャスト
全員を登場させて進行していく予定です。
Tibetteファンの皆さんも、その気持ちで読み進めていただければ嬉しいです。

pikari



☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜



薄明かりの部屋で、今日も変わらずモニターを睨みつける。
画面越しに写った、遮光カーテンからうっすらと漏れる光。
ふと、それを見つけ、Dylanは背伸びをした。
今日は、何曜日の何時だろう。連日の徹夜で頭がぼんやりしている。
あと1時間もすれば、編集作業も終わりかな。
再び椅子に腰をおとした時、電話が鳴った。
見慣れない番号だ。
・・・ハイ。
少し煩わしそうに出ると、相手の電話から外気を感じた。
Kitからだった。
事の成り行きを聞き、早々に電話を切ると、車のキーだけ握りしめ
Dylanは部屋を飛び出した。

夕方、学校前。
Betteが娘の姿を捉えると、クラクションを軽く鳴らす。
アンジーはいつもと様子が違うように見えた。
俯き加減に、トボトボとした様子でこちらに向かってくる。
どうかしたの?
彼女がドアを開けてすぐに、Betteは尋ねた。
・・・なにも。
俯いたまま、車に乗り込む。
誰かと喧嘩でもしたの?
うん・・・アンジーが小さく頷く。
ママB、お話聞いてあげるよ?
サイドブレーキを踏み、ハンドルから手を外すと、娘を真っすぐ見つめた。
ううん、大丈夫。
娘はTinaに似た芯の強い表情で顔を上げ、じっと母を見つめた。
小さな不安が Betteをかすめた。
今日の夕飯は、カレーにしたのよ。
母はわざと明るい声を出し、ハンドルを強く握りしめた。


見慣れない天井を見つめ、Helenaは目を覚ます。
・・・あれ?
起き上がろうとするが、同時に激しい動悸と吐き気に襲われる。
シーツに別の軋みを感じ、薄目を開けたまま、ベッドの脇に目をやる。
と、そこにはぐっすり眠るDylanの姿があった。
・・・病院だった。
点滴の冷たさで、ようやく事態を飲み込めてきた。
Dylanはまだ目覚めない。余程疲れた様子だ。
でも何故彼女が…?
車のキーを握りしめたままの手に触れてみる。ピクリとも動かない。
・・・なんなの?
ふいに怒りと悲しみが同時に込み上げ、Helenaは叫び声を上げたくなった。
口を真一文字に結び、眠るDylanを睨みつける。
それでも目覚めない。
Helenaはわざと大きな溜め息と寝返りを打ち、再び固いベッドに潜り込んだ。

Dylanが目覚めると、Helenaはまだ眠っていた。
彼女の髪に触れる。彼女のお気に入りのシャンプーの香りがした。
しばらくの間、Helenaの寝顔を見つめていた。
編集作業で使っていた、素材の画像と 彼女の寝顔が交互に脳を刺激する。
そんな時、Kitからメールが入った。
お見舞いを丁重に断り、お店は申し訳ないけれど 彼女はしばらく休ませると打った。
『 なんでいるの? 』
驚いて顔を上げると、疲れた顔をしたHelenaが見つめていた。
Kitから電話を貰ったの・・・。
だから?
・・・だからって。
Dylanは、言葉を詰まらせる。
もう、平気よ。迷惑をかけたみたいでゴメンなさい。もう私、平気だから。
そう言ってHelenaは身体を起こそうとした。
再び、激しいめまいと吐き気に襲われ、思わず目頭を押さえる。
そんな彼女の様子に、Dylanは悲しげに呟いた。

私のせいで、荒れていたの?
・・・黙ったまま、Helenaはシーツを握りしめた。
頬を勝手に生暖かいものが伝った。
眠れない日々が続いていた。
仕事をやみくもにこなせば、忘れられると思った。
Jennyやみんなを殺したい位憎んだ。
そして誰よりも、彼女を信じられなくなった自分を憎んだ…。

そうよ、あなたに 二度も裏切られたせい。
本心と真逆の言葉を吐き出した。
鍵を握りしめたまま、Dylanは俯いたまま呟く。
私は・・・どうすればいい?
窓から差し込む優しい光とは対照的に、二人の間に重く長い沈黙がのしかかる。

もう、いいから帰って。
Helenaが呟く。
しかし、Dylanはいっこうに立ち上がろうとはしなかった。

廊下を走る看護婦の足跡が聞こえ、そして静寂だけが侘しく残った。




眠らない街、NY。
夜景を見ながらはしゃぐ、タクシー内のAliceは一人、空元気だ。
そんな様子に気付きつつ、TinaBetteは黙って見守っていた。
誰よりも、Aliceの幸せを願っている二人。
Tashaの一件について 詳しく訊かなかったが、自分達がJamieとの事を
けしかけた形になったのかもしれない、とBetteは気に病んでいた。

五番街の通りを少し入った場所に、二人がたまに行くBarがあった。
洗練された雰囲気と人。
そこはLAとは全く違い、自分達には 少し馴染みにくい場所。
奥から2番目に 少し広めのテーブルを見つけ、店内を歩く。
この街に住んで以来、Tinaは忙しいし、ビアンバーにはあまり詳しくないのよ。
Betteは、腰を掛けながら話した。
じゃぁ、久しぶりの夜の外出なんだね。
大切な親友の為にも、退屈な二人には決してならないで、と作り笑顔をするAlice

そこに、三人組の女性の一人が声をかけてきた。
ここ、空いてるなら一緒に座らせて貰える?
構わないけど、、、
と、答えたBetteの横へ嬉しそうにその中の一人が座る。
Aliceが耳打ちをしてきた。
Tina、ヤバいよ。ヒレ肉に見えちゃってる。
・・・?
Aliceの言ってる意味がよく解らなかったが、見知らぬ彼女が確実にBetteを見つめている事には気付いた。
ちょっと、Tina。いいの?
良い気分はしないものの、Tinaは 黙ったままAliceを見つめる。
相変わらずBette自身は、そんな彼女の様子に気付いていないようだ。

そこへ、いかにも一見(いちげん)さん といった様子の女性が一人、話しかけてきた。
もしかして、Alice Pieszeckiさんですか?
子供のような、あどけない顔立ち。どうやらアジア人のようだ。
面倒だな、と思いながらも、笑顔を作りAliceは応えた。
彼女は亜美と言った。NY在住の日本人留学生らしい。
人懐っこい彼女は、Aliceの隣へ勝手にちょこんと座った。
よかったら、もう少しお話させて下さい。私、テレビ局に興味があって。
珍しく目を泳がせ、Tinaに助け船を求めるAlice
しかしTinaはどこ吹く風、といった様子で
Betteを口説こうとしている女性をおつまみにして 飲んでいた。

当のBetteは、夕方見た 娘の表情が忘れられずにいた。
バーボンに浮かぶ氷がゆっくりと溶け、グラスの中でカラリと揺れる。
指先でそっとグラスの縁をなぞると、指先に微かな音色を感じた。



pikasama69 at 21:49|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

February 05, 2011

Season7-2

大変お待たせしました(^▽^;)
Season7-2。実は随分前に仕上がっていたのですが、
次を書いてから・・・と思いつつ、修正したりしているうち
なんだか、自分の中で読み飽きてきたので(笑)
掲載しちゃいます。
一度、Season6-8(ココはホンモノ) → Season7-1
見てからの方が解りやすいかも。
では。
まずは皆さんにお楽しみ頂ければ光栄です。
補足は、最後に書くとします。



☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜



ねぇ!ちょっと、スプーンどこぉ?!
全く。この家、前のキッチンと違って何処に何があるんだか、ちっとも解らないよぉ。

いつもの朝より賑やかなのは、突然のAliceの訪問があったからだ。
Betteは大きな溜め息を付き、アンジーの部屋から顔を出す。
Alice、聞いて頂戴。
これからこの子を学校へ送りに行くのよ。
スプーンはその棚の右から二段目。アンジー、早く食事しないと遅刻よ!

部屋から慌ただしく出て来るアンジー。
そこへ唯一の傍観者といったペースで、Tinaがのっそり起きてきた。
Tee、貴女も早く食べちゃって。
ハイハイ、といった様子で、Tinaが慌ててコーヒーをテーブルへ運びつつ腰掛ける。
と、。
Betteの苛々の根源である、Aliceがこそっと耳打ちをしてきた。
ねぇ、、、。
Betteって いつからあんな家庭的になっちゃったの?
黙ったまま、ニヤリと笑うTina
そう、我が家も普通の家なのだ。


学校までの距離は、車で30分程。
行ってきます!と二人はTinaにKissをし、。
Betteはアンジーを慌ただしく車へと押し込む。
我が家に静寂が戻った。

…かのようにみえた。
あのさ、Tina。あたしNYの街って詳しくないの。
そうだよ!ちょっと、今晩あたりゲイバーでも連れてってよ。
…やれやれ。
Tinaは心の中で溜め息を付きつつ、Aliceを見つめた。
ねぇ、昨日は訊けなかったけど、あれからTashaとどうなったの?
別れた。終わり。解るでしょ?終わったの。
…あぁ、もう!ジェイミーだよ。二人があの後どうしたかは知らない。
てか、知りたくない。でも、もういいの。心配するのも疲れたもん。
ねぇTina、知ってた?あたし、元々はフェム系が好きなのよ?

小さく笑って俯くAlice。その笑顔をみて、Tinaもまた小さく笑う。
もう、しばらく恋はいいよ。
そう言ってAliceは持っていたコーヒーを飲み干した。



〜LA。
静かな朝だ。書きはじめてから随分経ったような気がする。
パソコンを閉じ、背伸びをする。と、キッチンに人の気配を感じた。
キッチンに向かうと、Shaneが立ったままコーヒーを飲んでいた。
おはよう、Jenny。眠れた?
おはよ。いいえ、ずっと書いてたから、これから眠るわ。
珍しいわね、自分でコーヒーを入れるなんて。プラネットは休み?
いいや、知らない。やってるんじゃないかな。
…そうなの。じゃ、お休み。
Shaneの動向に小さな違和感を感じつつも、それに触れる事なく、
Jennyは部屋を出た。
Bedに寝転び、先日Aliceから渡され読んだ、
アデルの最新作を思い出した。
作品の中で、自分が殺された事には さほど驚かなかったが、Shaneと結ばれた
あのくだりには、かなり動揺した。
あの時、ニキとの一件で傷ついたのは確かだ。
しかし、それは深い友情の結びつきからくる裏切りだった。
事実、あれを機にニキとは別れたし、Shaneとの蟠り(ワダカマリ)を取るには
時間を要した。
でもまさか、それ以上の感情なんて・・・。
自分すら気づかぬうちにアデルに見透かされていたような気分になり、
Jennyはシーツを被った。



〜NY。
通学路には毎日軽い渋滞が起こる。セレブの街だけあり、車も豪華だ。
Tinaは合わせる必要なんて ないというけれど、この子が惨めな思いを
学校でしていないか、Betteは少し心配していた。
入り口でアンジーを下ろし、行ってらっしゃいのKissをする。

我が子の駆けてゆく後ろ姿・・・。
私達の娘だもの。大丈夫よ。Betteは小さく微笑み、ハンドルを切った。




〜LA。<
Planetの朝は、いつもと変わりなく、Kitは鼻歌を歌いながら接客をこなす。
ただ、そこにヘレナの姿は見えなかった。
最近、そういう日が何日か置きに続いている。
Jennyのせいでこじれてしまった、ディランとの関係。
もう、人が信じられない、そう言ってヘレナが荒れた時期もあった。
Kitはただ見守るしかなかった。
それから数ヶ月経つと、ヘレナは自然にいつものオーナーとして戻っていた。
Alice達とも、いつも通り接していた。
ただ、彼女の何かが欠けているようで、それをKitは気にしていた。
Hitの夜の経営を中心にヘレナが力を入れはじめてから、
Planetには あまり顔を出さなくなった。
今日は久しぶりに彼女の自宅を訪ねてみよう、そう思っていた。

数時間後、Kitは従業員に少し出かけるとだけ告げ、ヘレナの家へ向かった。
玄関のチャイムを鳴らす。
…誰も出ない。
その場で彼女の携帯に電話をしてみた。
…出ない。数回かけてみる。
10回程鳴ると、ようやくヘレナが返事をした。
泥酔した様子だった。
聞くと、最近よく眠れず、睡眠薬と一緒に飲んでいるらしい。
今日はHitも休んでいいから。
そう言うとKitは電話を切り、別の場所に電話をした。




☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜ ☆*゚ ゜゚* *+:。.。:+* ゜ ゜゜


まず、驚かれたのと同時に、混乱するであろう部分から書き足します。
Jennyの件。
Season6が中途半端に終わってしまった事で、皆さんのモヤモヤも
曖昧なままだと思います。
そこで、私の中でSeason6を『現実と空想の混ぜこぜ』にしたいと思いました。
Season6のストーリー全部を『架空』にするのではなく、
一部は事実、一部は架空の物語の『交差』にしたかったんですね。
Jennyのキャラクターは、正直理解不能だし、好きじゃなかったのですが
あのまま殺してしまうのは、あまりに忍びなく・・・。
そこで考えたのがこの案でした。
Jennyの猿真似が好きな アデルの新作として、作り上げたのが
Season6。
皆さん、少し混乱してしまうかもしれませんが、そのような目で見て頂けると
今後の展開も楽しめるかと思います。
では、、、次がいつになるか(笑)L8の後かもしれませんが(笑)
感想等、言って頂けると嬉しいです。
なにせ、褒められて伸びるBetteちゃんなのでwww

pikari


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